腫瘍壊死因子(TNFα)は牛の急性相反応における脂質代謝の変動を誘導する
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要約
TNFαの投与は、血漿遊離脂肪酸(FFA)濃度を上昇し、ビタミンA濃度を減少及びリポタンパク質の超低密度画分(VLDL)を増加する。この作用は、TNFαが急性相反応における脂質代謝変動の調節因子であることを示している。
- キーワード:TNFα、牛、リポタンパク質、ビタミンA
- 担当:東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
- 連絡先:019-643-3546
- 区分:東北農業・畜産、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
エンドトキシンによって引き起こされる急性相反応は、サイトカインが調節因子として働き、栄養代謝及び内分泌機構に大きな変動をもたらす。この反応において発現するTNFαが脂質代謝を異化的に変化させることが解っているが、牛での知見は殆どない。本研究は、TNFαの投与が血漿脂質成分、脂溶性ビタミン及びリポタンパク質濃度に及ぼす影響を検討した。
成果の内容・特徴
- TNFα(5.0μg/kg)をホルスタイン種未経産牛の頸静脈より投与すると、血漿中性脂肪(TG)濃度が0.5及び24 hに上昇する(図1、上)。FFA濃度は12 h目まで高く推移する(図1、下)。
- 血漿ビタミンA濃度はTNFα投与後24 hに低下する(図2、上)。しかし、ビタミンE濃度への影響は見られない(図2、下)。
- 血漿中VLDL濃度は、血漿TG濃度と同様に0.5及び24 hに大きく増加する(図3)。
成果の活用面・留意点
- TNFαが牛の脂質代謝の変動を誘導することをin vivoで証明した初めての知見であり、リポタンパク質代謝の変化は体内における脂質成分の動態解明につながる重要な情報であり、ビタミンAの低下は免疫機能との関連性を強く示唆している。
- 1,000,000 × gで遠心することにより、リポタンパク質の分離(5 h)が従来法(50 h)に比べて短縮される。したがって、リポタンパク質の経時的変化が解析可能となる。
- 血漿TG及びVLDLの増加に及ぼすリポタンパク質リパーゼ活性について、TNFαとの関連性を含めて検討する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:乳牛及び肉用牛へのサイトカイン投与が内分泌機能及び生産性に及ぼす影響の解明
- 予算区分:交付金プロ(サイトカイン)
- 研究期間:1997~2002年度
- 研究担当者:櫛引史郎、甫立孝一、新宮博行、上田靖子、嶝野英子、篠田 満、横溝祐一
- 発表論文等:(1) Administration of rbTNF affects intermediary metabolism and insulin and GH secretion
in dairy heifers. J Anim Sci, 2000. 78:2164-2171.