ウシカテプシンD遺伝子に認められたアミノ酸置換を伴う多型
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要約
牛肉の熟成への関与が示唆されているウシカテプシンD遺伝子の2カ所で、アミノ酸置換を伴う多型を検出した。両多型ともPCR-RFLP法により簡易に検出可能である。
- キーワード:育種、肉用牛、ウシカテプシンD、遺伝子多型、アミノ酸置換、PCR-RFLP
- 担当:東北農研・畜産草地部・畜産物品質制御研究室
- 連絡先:019-643-3541
- 区分:東北農業・畜産草地、畜産草地
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
と殺後の牛肉の軟化や呈味性の向上、いわゆる牛肉の熟成の過程には種々の蛋白分解酵素が関係している。これらを支配する遺伝子の構造を決定すると同時に酵素の発現や機能に影響する遺伝子多型を検出することは、牛肉の軟らかさ等の品質向上を目的として肉牛集団の育種改良を行う上で不可欠である。当研究室では、食肉の熟成への関与が示唆されている蛋白分解酵素の一種であるウシカテプシンDのcDNA配列を決定した。本研究では、ウシカテプシンD遺伝子の多型を検索し、それがウシカテプシンD分子の構造および機能にどの様に影響するかを検討する。
成果の内容・特徴
- ウシカテプシンDのcDNA配列をもとにPCRプライマーを設計した。日本短角種、黒毛和種および黒毛和種×日本短角種交雑種の末梢血から分離したRNAを鋳型として逆転写PCR(RT-PCR)を行った。増幅したPCR産物の塩基配列を決定し、個体間で比較した結果、ウシカテプシンDのプロ領域でグリシン残基をセリン残基に置換する遺伝子多型を検出した。また、成熟型カテプシンDの重鎖領域でグリシン残基からアラニン残基に置換する遺伝子多型を検出した(図1)。
- プロ領域の多型は制限酵素ApaIで、重鎖領域の多型は制限酵素SmaIで各々制限酵素切断片長多型(RFLP)を示し、PCR-RFLP法により簡易に多型のスクリーニングが可能であることが明らかになった(図2)。
- PCR-RFLP法によるスクリーニングの結果、日本の肉用品種である黒毛和種、日本短角種および褐毛和種でこれらの変異を有する個体が存在することが明らかになったが、その出現頻度は低く、かつほとんどの個体が変異型と通常型をヘテロに有していた。黒毛和種の1頭で両変異を同時にホモに持つ個体が認められた。一方、アンガス種、ヘレフォード種、ホルスタイン種およびジャージー種では変異が見られなかった(表1)。
成果の活用面・留意点
- 今回検出された多型と肉の軟らかさ等の経済形質との関係が今後明らかになった場合、PCR-RFLP法によりウシカテプシンD遺伝子多型のスクリーニングを短時間で簡易に実施でき、牛群の育種改良への応用が期待できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:牛肉の熟成に関与する遺伝子の構造と機能の解明
- 予算区分:動物ゲノム
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:樋口幹人、渡邊彰、長嶺慶隆、宮下範和、粟田 崇