一番草におけるリードカナリーグラスの硝酸態窒素濃度の推移
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要約
早春に窒素を多施用した場合の一番草の硝酸態窒素濃度は、リードカナリーグラスがオーチャードグラスより低く推移する。とくに両牧草の穂揃い期で比較するとリードカナリーグラスはオーチャードグラスより硝酸態窒素濃度は低くても窒素吸収量は多い。
- キーワード:栽培、生理、牧草類、リードカナリーグラス、オーチャードグラス
- 担当:東北農研・畜産草地部・飼料生産研究室
- 連絡先:019-643-3564
- 区分:畜産草地、東北農業・畜産
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
東北地域でも堆肥やスラリーの牧草地へ過剰施用により牧草中の硝酸態窒素濃度の上昇が懸念される。そこで、寒地型イネ科牧草の中で施肥反応性に優れるリードカナリーグラスを取り上げ、オーチャードグラスと一番草について硝酸態窒素濃度の推移を異なる窒素施肥量の条件下で比較した。
成果の内容・特徴
- 東北農研内の造成3年目のリードカナリーグラス(RCG)とオーチャードグラス(OG)の草地を供試した。4月17日に窒素を硝安で10aあたり5kg(5N区)、10kg(10N区)、15kg(15N区)施肥した。リン酸、カリウムは全区で順に10aあたり2.5kgと5kgにした。5月15日、5月22日、5月29日および6月5日に1m2の刈り取りを行い、乾物重、硝酸態窒素濃度および窒素吸収量として全窒素蓄積量を測定した。施肥量に関わらず、収穫適期である穂揃い期はRCGでは6月5日、OGでは5月22日となった。RCGの生育ステージの進み方はOGに比べて遅い(表1)。
- 硝酸態窒素濃度については、5N区では全調査日で両牧草の濃度は同程度であった。10N区では5月15日ではRCGは伸長期にあたり、出穂始期にあたるOGより濃度は高かったが、生育ステージの進んだ5月22日から6月5日では同程度であった(表1、図1)。15N区では5月15日から5月29日では、RCGはOGより濃度は低くなったが、6月5日には同程度であった(図1)。窒素吸収量については各区において調査日に関わらずRCGとOGは同程度であった(図1)。
- 穂揃い期の15N区における硝酸態窒素濃度を比べるとRCGはOGより低く、窒素吸収量を比べるとRCGはOGより大きい(表2)。
成果の活用面・留意点
- 家畜ふん尿を多量に還元したリードカナリーグラスとオーチャードグラスの一番草の硝酸態窒素濃度および窒素吸収量に関する基礎知見として活用できる。
- 地域間差および土壌条件の検討が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:寒地型牧草の硝酸態窒素蓄積要因の解明と転換畑における栽培技術の開発
- 予算区分:委託プロ(21世紀プロ)
- 研究期間:1997年度~2001年度
- 研究担当者:伏見昭秀、魚住 順、田中 治、出口 新
- 発表論文等:Fushimi et al. XIX international grasslands congress abstract (4) pp172-173