根圏冷却がダイズわい化病類似症状を発生させる
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要約
草型のわい化と縮葉を病徴とするダイズわい化病と類似した症状は、根圏冷却により発生する。また、その反応には品種間差異が認められる。
- キーワード:ダイズ、わい化病類似症状、縮葉、根圏冷却
- 担当:東北農業研究センター・地域基盤研究部・農業気象研究室
- 連絡先:019-643-3461
- 区分:共通基盤・病害虫,東北農業・生産環境
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
東北地方の太平洋沿岸部を中心としたやませ常襲地域では、草型のわい化と縮葉症状を呈するダイズが頻繁に見出される。この症状はダイズわい化病に類似しているが、ダイズわい化ウイルスの検出されない場合があり、わい化病の発生実態の把握に支障をきたしている。そこで、ダイズ2品種(スズカリ、黄宝珠)を対象にして、根の冷却が草型のわい化と縮葉症状に及ぼす影響、およびその反応性の品種間差異を検証する。
成果の内容・特徴
- 人工気象室を利用して植物体地上部を生育適温(25℃)に保ちつつ根圏部のみを冷却し、生長ならびに葉の形態変化を観察する。根圏温度25℃のスズカリは、処理開始後2週間で第5本葉まで順調に正常な葉を展開するが、根圏温度17℃以下の根圏温度区では葉の展開、草丈、乾物生産ともに著しく抑制され(図1、図2)、かつ、縮葉症状が認められる(図3)。したがって、スズカリでは地温17℃~25℃の範囲に症状発生の臨界温度があると考えられる。
- 黄宝珠では、根圏温度低下につれて生長が抑制されるがその程度はスズカリに比べて軽く(図1、図2)、縮葉症状は根圏温度9℃でも全く認められない。
- 以上より、わい化病類似症状は根圏冷却によって引き起こされ、しかも、その反応には品種間差が認められる。
成果の活用面・留意点
- 本研究の成果は、冷涼なやませ地帯に適したダイズ品種の育成・選択を進める上で有益な情報となる。
- また、本研究の成果は、わい化病診断精度の向上に活用することができる。なお、確実なわい化病診断のためにはELISA (Enzyme Linked Immunosorbent Assay)などによって、ダイズわい化ウイルスの感染を確認する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:温度環境に依存した生体膜水透過性の変化が植物の吸水蒸散プロセスに及ぼす影響の解明
- 予算区分:交付金
- 研究担当者:村井麻理