小麦における種子休眠関連遺伝子VP1相同遺伝子の単離
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要約
小麦から、種子の休眠性やアブシジン酸感受性に重要な役割を果していると考えられているトウモロコシ等のVP1転写因子と相同のcDNAクローンを単離した。単離したcDNAは、全翻訳領域を含み、TaVP1遺伝子と命名する。
- キーワード:種子休眠、アブシジン酸(ABA)感受性、VP1遺伝子
- 担当:東北農研・作物機能開発部・品質評価研
- 連絡先:019-643-3513
- 区分:東北農業・生物工学
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
乾燥地起源の小麦は、収穫時期が梅雨に当たるため、穂発芽を起こしやすく、穂発芽抵抗性品種の育成が求められている。種子の休眠性が、穂発芽性の大きな要因と考えられているが、小麦種子休眠性の遺伝子レベルでの機構解明はあまり進んでいない。そこで、種子の休眠性やアブシジン酸感受性の鍵となる重要な転写制御因子の一つである小麦VP1遺伝子の全塩基配列を明らかにする。
成果の内容・特徴
- ミナミノコムギからVP1遺伝子に相同な遺伝子をPCR法等を用いて単離し、TaVP1と名付ける(AccessionNo.AB047554)。他作物のVP1遺伝子で共通に存在することが知られているA, B1, B2, B3保存領域が、単離された遺伝子においても図1に示したB3保存領域の例に見られるように、高度に保存されている。
- このクローンをプローブとして、穂発芽抵抗性極強で強い休眠性を示すミナミノコムギと、穂発芽抵抗性極弱で休眠性が非常に弱い東山18号の品種間(発芽率:ミナミノコムギ、0%、東山18号、100%、22度、5日目)で、TaVP1遺伝子の発現量を比較すると、TaVP1遺伝子の発現に、顕著な差がみられ、ミナミノコムギで高い発現を示す(図2)。
成果の活用面・留意点
- 小麦VP1遺伝子マーカーとして、使用できる。
- VP1遺伝子によって発現が誘導されることの知られているEm遺伝子等のプロモーターの一過性発現アッセイ系による解析に使用できる。
- VP1遺伝子の完熟種子胚中での発現量を制御することにより、種子休眠を強められる可能性が示めされた。ただし、VP1遺伝子の役割については、今後さらに検討が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:小麦種子休眠関連遺伝子を用いた穂発芽抵抗性DNAマーカーの開発
- 予算区分:21世紀プロ
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:中村信吾
- 発表論文等:(1) S. Nakamura and T. Toyama (2001) J. Exp. Botany 52:875-876.
(2) 特許出願 (特願 2000-350363)2000年11月
(3) 「小麦種子胚のVP1-like遺伝子の発現と種子休眠性」、第22回日本分子生物学会, 1999.