地域振興型第三セクターの事業多角化による経営改善と支援策

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要約

地域振興型第三セクターの経営改善策の一つとして、事業多角化が有効である。その際、企業的運営に不足する経営資源を民間企業から確保するとともに,行政のソフト事業による支援が重要である。

  • キーワード:第三セクター、多角化、範囲の経済、内部補助、経営資源確保,公共補填
  • 担当:東北農研・総合研究部・経営管理研究室
  • 連絡先:019-643-3492
  • 区分:東北農業・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

農村では第三セクター(以下三セク)を活用した地場産品の加工・販売や交流事業への取り組みが増加している。しかし、公共性と企業性を併せ持つ三セクは、地域振興という公共性への期待が大きい反面、効率的運営と収支適合という企業性が弱く赤字問題が生じている。市町村財政の逼迫から公共補填が困難となり、経営改善策として多角化が模索されているため、その際の経営成果との関係や運営上の支援策を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 多角化している三セクの割合は65%で事業部門数は平均4.4である。事業部門数とと経営成果の関係は(図1)、事業数が多いほど売上高は多く、事業数が3を越えると赤字企業割合も減少している。多角化の経営改善は、一定以上に事業が増えると一部門当りに共有できる経営資源の減少と経営管理の複雑さが増すことから経営成果は低下する。総収入に占める公共補填の割合は、事業数との関係でみるとU字型を示す。
  • 事業構成は(図2)、事業数2~5は収益事業が、6以上は公益事業が多い。2~5事業の経営は、収益事業を増大させることで低収益性事業へ利益の内部補助を行い、公共補填と赤字を減らしている。しかし、事業数6以上の経営には、設立間もない売上高1億円程度の小規模経営や公共施設管理など公益事業が大きな経営が含まれ公共補填割合が高い。つまり、多角化は経営改善に有効であるが、売上高向上を伴わない場合や、過大なアウトソーシングの受け皿とする場合には経営改善の効果を減退させる。
  • 多角化の効果を得るには民間企業からの経営資源確保による企業的運営が重要である。1)人材確保は、役員を含めた民間企業からのUIターン(平均雇用割合13%)を活用している優良経営が多い。2)事業数別に製造ノウハウの確保先をみると(図3)、事業数2~3の加工に重点がある段階ではメーカーとの提携が、売上高も増え販路拡大に重点が移る6~8では取引先の流通業者から情報を得ている割合が相対的に高い。
  • 行政への支援要望(図4)は、赤字経営の多さから「財政支援」、「他の三セク活動に関する情報や加工・開発のノウハウ紹介」が多いが、事業部門数が増えるに従い「販路確保のための流通業者紹介や交流会の開催」も多くなる。企業性を醸成させるために必要な経営資源を確保する支援策として、ソフト事業への要望の高さを指摘できる。

成果の活用面・留意点

  • 三セクの経営改善、補助・助成金など公的補填に加えソフト事業による支援方策を検討する場合に活用できる。
  • 多角化の戦略として、収支改善を重視するのか広範な地域への波及効果を狙った事業拡大策を採用するかは、市町村の地域経営の戦略や三セクの発展段階で異なる。
  • 本情報の対象は東北地域の市町村が設立した農業・農村関係の地域振興を目的とする三セクで、主に農作業受託や観光開発・土地開発等を目的とする三セクとは異なる。

具体的データ

注.「農山村振興を行う第三セクターのアンケート概況調査」

図2 事業部門数別の事業構成
図1  多角化度合からみた三セクの経営指標

図3  製造ノウハウの主要な確保図4  行政に対する主要な支援要望

その他

  • 研究課題名:地域振興型公企業を核とした活性化メカニズムの解明と効果の評価
  • 予算区分:農村経済活性化
  • 研究期間:1999~2002年度
  • 研究担当者:金岡正樹、川手督也、安藤益夫
  • 発表論文等:1)金岡(2001)第51回地域農林経済学会大会報告要旨:60.
                      2)金岡(2000)東北農試総合研究(B)18:18~29.