民俗芸能団体の類型化に基づく伝承活動の活発化のポイント

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要約

民俗芸能団体は「交流・連携型」「伝統型」「小規模型」の三つに類型化される。団体類型の比較考察から、伝承地域以外の人々や関係機関との交流・連携、行政支援を通じた公演機会の増大及び人的・経済的資源の確保が伝承活動の活発化のポイントになる。

  • キーワード:民俗芸能団体、類型化、交流・連携、行政支援、公演機会、人的・経済的資源
  • 担当:東北農研・総合研究部・農村システム研究室
  • 連絡先:019-643-3493
  • 区分:東北・経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

民俗芸能は農業農村振興を促す地域資源としての期待が高い。しかし、伝承活動自体が衰退し廃絶する事例も多く、民俗芸能を活用していくためには伝承活動の活発化が必要である。そこで、東北において伝承活動が盛んな地域の一つである岩手県の民俗芸能団体にアンケート調査を行い(県教育委員会『岩手県の民俗芸能』悉皆調査より二分の一無作為抽出、1999年実施、有効回答率49.5%)、活動の活発化のポイントを摘出する。

成果の内容・特徴

  • 芸能団体に関する9指標を用い数量化III類とクラスター分析によって、芸能団体をA 類型、B類型、C類型の三つに類型化した(表1)。
  • A類型は公演機会の多少を示す年間総公演回数や交流活動数、人的・経済的資源の調 達量を示す会員総数や年間活動費が多い。交流活動数や行政支援数、「イベント」重視 の割合が高く、他地域の人々との交流や行政との連携が必要な「イベント」等の公演で 芸能をアピールし人的・経済的資源を確保する「交流・連携型」の類型といえる。
  • B類型は公演機会が少なく「地域ぐるみ型」加入条件や「地元住民の補助」の活動費 調達、「伝統行事」重視の割合が高い。地域で伝統行事を行う「伝統型」の類型である。
  • C類型は団体数が全体の過半を占めるが、公演機会、人的・経済的資源の調達量とも 少ない。会員総数が少なく、「地域非限定・無条件型」加入条件や行政の主催が多い「芸 能祭」重視の割合が高い。行政を頼み有志で活動を継続する「小規模型」の類型である。
  • 「交流・連携型」は過去10年間の伝承活動が「活発になった」とする団体が6割を越 えるのに対し、「伝統型」「小規模型」の団体では3割に満たない。これら団体類型の 比較考察から、伝承活動の活発化には公演の機会や人的・経済的資源の確保が重要と判 断される。これらを確保するには、「伝統型」や「小規模型」の団体のように地元住民 や有志のみによる活動では難しく、「交流・連携型」の団体のように、他地域の人々と の交流活動、行政との連携を積極的に行うことが重要といえる。
  • 伝承活動の活発化に向け他地域の人々との交流や行政との連携を重視する団体は、「交 流・連携型」「小規模型」で9割、「伝統型」では6割に止まる(表2)。すべての類型 で行政との連携を希望する団体が多く、具体的には「資金援助」「学校教育への導入」 「公演の場づくり」「地域づくりへ活用」等の行政支援への要望が強い。したがって、 交流・連携活動や行政支援を通してこれらの要望を実現し、これによって公演機会や人 的・経済的資源を確保することが、伝承活動を活発化するポイントと判断される。

成果の活用面・留意点

  • 具体的支援策の実施の際、公演機会や人的・経済的資源の確保に主眼を置く必要がある。
  • 農業農村振興に向けた民俗芸能の活用及び伝承活動の活発化を図る施策に活用できる。

具体的データ

表1 民俗芸能団体の各類型の特徴

 

表2 他地域の人々との交流や行政との連携の意向

その他

  • 研究課題名:民俗行事の伝承活動による地域活性化条件の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:澁谷美紀
  • 発表論文等:1)澁谷(2000)農業経営通信206:18-21
                      2)澁谷(2001)農村計画学会:35-36
                      3)澁谷(2001)日本の農業220:1-74