農産物直売所における情報交換機能の重要性

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要約

産品を介した情報交換を積極的に行う出荷者は、次の出荷につながる情報を直売所活動から得ており、売上に結びつけている。直売所組織が大型化しても、出荷者が直接利用客や他の出荷者と接し情報交換を行う場を確保する必要がある。

  • キーワード:農産物直売所、情報交換機能、出荷戦略
  • 担当:近中四農研・総合研究部・総合研究第1 チーム
  • 連絡先:084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・農業経営
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

本情報は、これまで記述的にしか説明されてこなかった、直売所が持つさまざまな機能のうち、情報交換機能の重要性を、利用客および出荷者に対する意識調査結果をもとに数値的に示すものである。

成果の内容・特徴

  • 本情報では、生産者との対話を直売所の魅力に挙げた利用客を情報重視消費者と呼び、農家同士の対話や消費者との対話を直売所活動に魅力に挙げた出荷者を情報重視生産者と呼ぶ。
  • 図1に示すように情報重視消費者と非重視消費者間で1 人1 回あたり購入金額に有意差は無かったが、交流支持者は非支持者に比べて利用頻度が高いので、図2のように直売所からの1 人あたり年間購入金額は支持者のほうが多い。
  • 図3および図4には情報重視生産者と非重視生産者の出荷戦略や粗売上額の違いを示す。すなわち情報重視生産者は品目を多くする、端境期に出荷するといった出荷戦略を見出している。また出荷者1人あたり年間販売金額は、情報重視生産者が多い。
  • つまり対面販売や共同販売の利点を活かし、利用客や他の出荷者との積極的な情報交換を行うことから、直売所出荷者は次の出荷戦略を練り、売上増加につなげている。
  • 利用客も、出荷者との対話のなかから、自分にとって有用な情報を入手し、実際の商品購入を行っている。
  • 近年農協や自治体、普及機関の支援等により直売所組織が大型化するにつれて、出荷者は生産へ、運営主体は店舗運営へ役割が分化する傾向にある。
  • しかし一般小売店とは異なり、出荷者同士や出荷者と利用客が直接的、あるいは商品を介した情報交換を行う場を確保することが、売上面からみても、直売所活動の意義として重要である。

成果の活用面・留意点

  • 今後直売所の新設や合併を進める際に、行政や普及機関が支援を行うための参考資料となる。

具体的データ

図1 1人1回あたり購入金額 図2 1人あたり年間購入金額

 

図3 情報重視生産者と非重視生産者間の出荷戦略の違い 図4 出荷者1人あたり年間祖売上額

 

注:図1と2の「情報重視消費者」とは、「生産者と話しながら買い物ができる」点を直売所の魅力に挙げた利用客(131人中39人)、図3 と4 の「情報重視生産者」とは、「客の生の意見が聞ける」「農家同士の交流が深まる」点を魅力に挙げた出荷者を指す。図4では「客の生の意見」「農家同士の交流」のいずれかでも魅力に挙げた出荷者21人を情報重視生産者としてまとめている。

その他

  • 研究課題名:新流通チャネルの管理手法と収益性
  • 予算区分:中山間水田複合生産
  • 研究期間:2000 ~2001 年度
  • 研究担当者:飯坂正弘、藤森英樹、高橋太一、櫻井清一(千葉大学)
  • 発表論文等:1)飯 坂(2001)農業および園芸76(6):641-647
                      2)飯 坂(2001)農業および園芸76(7):749-755
                      3)飯 坂ほか(2001)中国農業試験場流通研究資料9:63-80