選択型コンジョイント分析の農産物マーケテングへの適用方法

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要約

選択型コンジョイント分析は従来型コンジョイント分析よりも被験者の負担が少なく、農産物のマーケティング・リサーチにも適用できる。夏秋イチゴに適用した結果、消費者の評価は「色」、「産地」「大きさ」「甘さ」の順に高く、産地別では国産の方が外国産より格段に評価が高い。

  • キーワード:選択型コンジョイント分析、プロファイル、限界支払意志額、需要関数
  • 担当:東北農研・総合研究部・総合研究第5チーム
  • 連絡先:電話019-643-3494、電子メールshimo@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・経営
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

従来型のコンジョイント分析では、被験者にプロファイル(仮想的商品)の選好順に番号を付けてもらう方法を採っている。しかし、この方法では選好順位が低くなるほど回答が困難になり、被験者の負担となる。一方「選択型コンジョイント分析」では、2~4つのプロファイルの中からもっとも好ましい1つだけ選択してもらう方法を採るため、被験者への負担が少ない。また、限界支払意志額や需要関数を計測出来るため、汎用性が高い。本成果では夏秋イチゴを対象品目として選択型コンジョイント分析の適用方法と分析結果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • プロファイルはイチゴ1個について、属性と水準を、「価格」(20円、50円、80円)、「色」(熟・赤、未熟・半分緑)、「甘さ」(普通、甘い)、「大きさ」(大、小)、「産地」(国内産、外国産)の5属性、3水準、2水準、2水準、2水準、2水準に設定した。直交計画により、8つのプロファイルを作成した。
  • 図1のように熟・未熟、大・小はイラストでも表現し、その他の属性はテキスト情報とした2つのプロファイルを組み合わせたカードを8C2=28枚作成した。その中から14枚をランダムに選んで1人分の調査票とすると、1ユニット(28枚)から2人分の調査票が出来る。これを29ユニット用意して58人分の調査票を作成した。被験者には2つのプロファイルの、どちらか好ましい方を選択してもらった。
  • 表1に分析結果を示す。効用値の高い順に、「色」、「産地」「大きさ」「甘さ」となった。
  • 限界支払意志額は、価格の係数の絶対値で各属性変数の係数を除することで求められる(価格データは10円単位なので10倍する)。表1の右に示すように色は77.9円、甘さは12.3円、大きさは49円、産地は72円であった。すなわち、産地を例にとると被験者は国内産イチゴに対し外国産イチゴより1個あたり最大72円多く支払う意志を持っていることを示している。
  • 計測結果をもとに、数式1からイチゴの需要関数を求めることができる。回答者をランダムサンプリングとみなして、その母集団を1000世帯と仮定し、産地の違いのみによる需要関数を求め図2に示す。国内産イチゴは外国産イチゴよりも格段に高い購買確率となった。

成果の活用面・留意点

  • 被験者は総研第5チームと契約している消費モニター58名(盛岡市並びに盛岡市近郊在住の20歳以上の女性)とし、2002年8月中旬にに調査票を送付し9月上旬までに回収した。
  • 1人あたりに用いるカードの枚数は任意であるが20枚以下が望ましい。また、プロファイル・カードに「どちらも選択しない」選択肢を付加する方法もある。
  • 選択型コンジョイント分析の計算にはTSPやCJ1を用いることが出来る。

具体的データ

図1 イチゴのプロファイル・カード例

 

表1 推定結果

 

数式1

 

図2 国内産と外国産のイチゴの需要関数

その他

  • 研究課題名:新規導入作物の消費ニーズ把握及び商品開発手法の開発
  • 予算区分:寒冷気候利用
  • 研究期間:1999~2003年度
  • 研究担当者:下山禎、飯坂正弘、野中章久
  • 発表論文等:下山他(2002)
                      農業経営通信
                      214:22-25.