水稲直播での播種後落水管理後の減水深と除草剤のタイヌビエ防除効果

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水稲湛水直播栽培では、播種後落水管理後の減水深が大きくなる場合がある。減水深が2cm/日程度であれば除草剤のタイヌビエ枯殺効果は高いが、減水深が2cm/日を越えると枯殺効果が低下し残効日数も短くなるので、後発ヒエ対策を早める必要がある。

  • キーワード:水稲湛水直播栽培、播種後落水管理、除草剤、残効期間、枯殺効果
  • 担当:東北農研・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:電話0187-66-2771、電子メールwatahiro@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・水稲、共通基盤・雑草
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

播種時期が低温に遭遇する寒冷地の湛水直播栽培では、播種後落水管理が苗立安定化に有効である。しかし、落水管理後は水持ちが悪くなりやすく、入水後に散布する除草剤の効果に悪影響を及ぼす。そこで、湛水直播栽培における効率的な除草剤利用技術の確立に資するために、数種の除草剤を落水管理後に処理し、水田雑草タイヌビエに対する除草効果と除草剤の種類、減水深及び土壌の種類との関係を解析する。

成果の内容・特徴

  • 湛水直播栽培では、土壌表面にき裂が生じるほどの強い落水管理を行えば入水後の水持ちが悪くなることがあり、場合によっては減水深が10cm/日以上となる(図1)。
  • 減水深の増大とともにタイヌビエに対する枯殺効果は低くなるが、2cm/日程度の減水深が維持されていれば枯殺効果は高い。植物体内への吸収が早い茎葉処理剤成分のシハロホップブチルを含む除草剤の枯殺効果は、減水深によらず比較的安定している(図2)。
  • 減水深が2cm/日を越えるとタイヌビエに対する残効日数も短くなる。残効期間が長いとされるカフェンストロール含有剤でも、減水深の増大とともに残効が短くなり、3cm/日を越えると残効日数は20日以下となる(図3)。このような場合は、後発ヒエ対策を早める必要がある。
  • 沖積植壌土(灰色低地土)、黒ボク植土、沖積砂壌土など、土壌の違いにかかわらず、タイヌビエ枯殺効果は漏水によって低下する。一方、落水管理後であっても漏水のない条件では枯殺効果は高い(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 水稲除草剤の使用条件は減水深2cm/日なので、播種後落水管理を行う場合であっても減水深が大きくなるような強度の落水は避ける必要がある。
  • 水稲湛水直播栽培の除草体系の指導場面で活用する。
  • 畦畔からの水漏れによる減水については適用できない。
  • 水稲直播栽培で湛水散布する一発処理剤についての情報であり、落水条件で茎葉散布する除草剤の効果変動には適用できない。
  • タイヌビエ以外の雑草に対する枯殺効果や残効日数については別途検討する必要がある。

具体的データ

図1 入水後における減水深の推移

 

図2 減水深と処理2週後のタイヌビエ残存本数

 

図3 減水深とタイヌビエに対する残効日数 図4 異なる土壌での除草剤処理2週後のタイヌビエ 残存本数

その他

  • 研究課題名:大区画水田を想定した省力的雑草防除技術の確立
  • 予算区分:21世紀7系
  • 研究期間:1998~2003年度
  • 研究担当者:渡邊寛明、橘雅明、内野彰