アブラナ科野菜における総合的病害虫管理
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要約
アブラナ科野菜の圃場における病原菌密度、害虫密度等を把握し、防除メニューに従って対策技術を選択し、組み合わせることにより、根こぶ病、コナガ等の総合的病害虫管理ができる。
- キーワード:総合防除、アブラナ科野菜、根こぶ病、コナガ、苗立枯れ症、萎黄病
- 担当:東北農研・総合研究部・総合研究第3チーム、経営管理研究室、地域基盤研究部・害虫生態研究室、
畑地利用部・畑病虫害研究室、畑土壌管理研究室
- 連絡先:電話024-593-5151、電子メールyuri@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境(病害)、共通基盤・病害虫、総合研究、野菜茶業・野菜生産環境
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
アブラナ科野菜を連作している産地では根こぶ病、コナガ、萎黄病の発生が問題となっており、安定生産の阻害要因となっている。また、苗立枯れ症の発生も問題となっている。
これらの病害虫をはじめとして、これまでの病害虫防除は化学合成農薬に大きく依存してきているため、環境に配慮し、化学合成農薬の使用量を削減して、アブラナ科野菜を安定的に供給するための総合防除技術を開発する。
成果の内容・特徴
- アブラナ科野菜病害虫の総合的病害虫管理は図1のような手順に従って行う。
- 根こぶ病については総合防除を行う際には、圃場の病原菌密度を把握すると同時に、作成した病原菌密度-発病度曲線を考慮して、表1に示すような防除技術を選択する。苗立枯れ症は菌食性のトビムシ、キャベツ萎黄病は病原性喪失菌とカニ殻粉末、アブラナ科野菜根こぶ病は葉ダイコンやエンバクなどのおとり植物と石灰資材等により、発病を抑えることができる。また、コナガは寄生蜂のセイヨウコナガチビアメバチを放飼することにより、幼虫密度を抑制できる。
- 福島県白河市のブロッコリー栽培の現地圃場での実証試験の結果から、おとり植物と石灰資材等を併用することにより、慣行防除並に根こぶ病の発病を抑制できる(データ略)。
- 岩手県西根町のキャベツ栽培の現地圃場で、根こぶ病のおとり作物のエンバクを前作し、寄生蜂のコナガに対する効果を検討した実証試験の結果から、寄生蜂の放飼と選択性殺虫剤の併用により、コナガの幼虫密度を慣行防除とほぼ同程度かそれ以下に抑制することができる(図2)。また、その際の収益性の比較は表2の通りであり、差別化して、1割高い単価で販売することにより、慣行と同等の収益が得られる。アンケートの結果では、8割の消費者は減農薬野菜を1割以上高くても買うと回答している(データ略)。
- 根こぶ病、コナガ、萎黄病、苗立枯れ症については総合的病害虫管理を実施する際に総合防除策定の概略を示したマニュアル(研究者・指導者用)を、利用する。
成果の活用面・留意点
- 寄生蜂によるコナガの防除については、平成11年度の成果情報「セイヨウコナガチビアメバチの放飼によるコナガ密度抑制効果」が参考となる。
- 一部の個別技術の利用に際して、現段階での利用に制限がある場合があるため、留意する。
具体的データ


その他
- 研究課題名:根こぶ病防除対策マニュアルの確立
- 予算区分:アブラナ科野菜
- 研究期間:2001~2002年度
- 研究担当者:村上弘治、佐藤剛、古谷茂貴、對馬誠也、宍戸良洋、高篠賢二、榊原充隆、野田隆志、藤森英樹、
折登一隆、野中章久、松久勉、金岡正樹、角田毅、長谷川啓哉、澤田守、吉田隆延、門田育生、
野村良邦、白石啓義、江波義成、岡野正豪
- 発表論文等:1)Murakami et al. (2002) Soil Sci.Plant Nutr. 48:421-427.
2)村上 (2003)アブラナ科野菜根こぶ病総合防除マニュアル、東北農業研究センター:1-38.
3)高篠・榊原 (2003)生物等利用による寒冷地環境保全型コナガ防除マニュアル、
東北農業研究センター:1-13.