重窒素標識法でみた寒冷地水田における牛ふん堆肥窒素の動態

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要約

寒冷地における完熟牛ふん堆肥由来窒素の水稲に対する3作合計の利用率は7%と低いが、3作後にも70%近くが土壌中に残存する。また、堆肥の施用量が10アール当たり1~4トンの範囲では、水稲に対する利用率には差が認められない。

  • キーワード:重窒素標識、完熟牛ふん堆肥、窒素動態、水田土壌、水稲
  • 担当:東北農研・水田利用部・水田土壌管理研究室
  • 連絡先:電話0187-66-2775、電子メールmizuki@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

水田における施用堆肥の分解特性、窒素の収支は主に無施用区との差し引き法、ガラス繊維ろ紙法等を用いて推測されてきた。近年、これらのように間接的に窒素の動態を推測するのではなく、重窒素で有機物を標識し、それを用いて有機物由来の窒素を直接追跡する方法が用いられるようになってきた。しかし、家畜ふん堆肥についてはその事例は限られており、特に寒冷地水田での検討例はほとんどない。そこで、重窒素標識牛ふん堆肥を用い、堆肥由来窒素の収支の経年変化を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 寒冷地水田における完熟牛ふん堆肥由来窒素の水稲に対する肥効は、残効期間を含めた3年間ほぼ安定して期待されるが、3作合計の利用率でも7%と低い(図1)。生育時期別にみると、幼穂形成期までで1.0~1.5%、出穂期までで1.6~2.1%、成熟期までで2.0~2.6%となり、生育全般を通じて堆肥の肥効が期待される(図2)。
  • 牛ふん堆肥を施用し水稲1作後に土壌中に残存する堆肥由来窒素は約75%で、さらに残効2作後にも70%近く残存する(図3)。
  • 牛ふん堆肥の施用量が10アール当たり1~4トンの範囲では、その施用量にかかわらず水稲に対する肥効(利用率)や土壌中の残存率には差が認められない(図1、3)。
  • 系外への損失は、牛ふん堆肥の施用初年目には20%強認められるが、残効期間には可給化した窒素の2/3が水稲に利用され、系外への損失はごくわずかである(表1)。また、土壌中に残存する堆肥由来窒素には無底枠と有底枠との間に大差がないことから、系外への損失のうち下層への流亡による損失はほとんどない(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果の適用範囲は非水溶性画分が全窒素の大部分を占める完熟堆肥である。
  • 寒冷地における本成果は、温暖地のポット試験などと比べると水稲による利用率が低い。堆肥由来窒素の水稲による利用率や土壌への残存率は、地温や堆肥の腐熟度に大きく影響される。

具体的データ

図1 水稲に対する堆肥由来窒素の肥効の経年変化

 

図2 各生育時期までの堆肥由来窒素の肥効 図3 堆肥由来窒素の土壌への残存

 

表1 牛ふん堆肥由来窒素の収支の経年変化

その他

  • 研究課題名:有機性資源コンポストの肥効特性の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:住田弘一、西田瑞彦、加藤直人