粉末蛍光顔料を用いたアカヒゲホソミドリカスミカメの大量標識法
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要約
アカヒゲホソミドリカスミカメの体表に粉末蛍光顔料を付着して標識し、UVランプまたはブラックライトで蛍光を検出する。本標識法により、カメムシを能率的に大量標識することが可能である。
- キーワード:アカヒゲホソミドリカスミカメ、標識、粉末蛍光顔料、大量
- 担当:東北農研・水田利用部・水田病虫害研究室
- 連絡先:電話0187-66-1221、電子メールttkoba@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境(病害虫)、共通基盤・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
東北の主要な斑点米カメムシであるアカヒゲホソミドリカスミカメは、休耕田、雑草地、畦畔などで繁殖し、水田に侵入して斑点米被害を与える。本種の移動実態を把握するためには、大規模な放飼と再捕獲の試験を行う必要がある。このための標識法は、カメムシの生存と飛翔に影響がなく、能率的で一度に大量の処理ができることが求められる。
成果の内容・特徴
- 微粉末状の蛍光顔料であるSINLOIHI FX300シリーズ(シンロイヒ株式会社)を用いてアカヒゲホソミドリカスミカメを大量標識する。
- [方法1]粉末蛍光顔料を広げたシャーレをケージの中央に設置し、吸虫管等を用いてアカヒゲ成虫を顔料の上に落下させて適量の顔料を体表に付着させる。成虫はすぐに顔料から飛び去るので連続した標識が可能である。飼育個体や野外で捕獲した個体を標識するのに適する。
- [方法2]または,本種の生息地において蛍光顔料を20g/m2で均一に散布し,本種を植物体と共に一斉に標識する。雑草地に定着している個体を無差別に大量標識するのに適する。
- 虫体に付着した顔料は、ブラックライトやUVランプの紫外線を照射することで確認できる(図1、2)。
- 交尾により標識個体から非標識個体へ顔料が移行して、非標識個体の後脚などからわずかな蛍光が検出されることがあるが、蛍光の程度と特徴から標識個体と区別できる(図2)。
- 雨天を含む野外条件で、蛍光顔料は少なくとも2週間、検出可能なレベルに維持される。
- 羽化日に標識した成虫の生存率は非標識虫と比較して差がない(図3)。
- 室内における飛翔試験の結果、標識虫の飛翔能力は非標識虫と比較して差がない(表1)。
- 微粉末蛍光顔料は複数の色が入手可能で、安価である。
- ネイルエナメルによる標識法と比較してより簡便で、能率が格段によい。
成果の活用面・留意点
- 本標識法を利用することで、アカヒゲホソミドリカスミカメの大規模な放飼と再捕獲の試験が可能となる。
- 粉末蛍光顔料は、捕獲の過程で標識虫から非標識虫に移行することがあるので注意を要する。
- ネイルエナメルによる標識は可視光下で容易に標識の判別ができるため、目的に応じて、粉末蛍光顔料による本標識法と使い分ける。
- 本種の新しい和名としてイネホソミドリカスミカメが提唱されている。
具体的データ


その他
- 研究課題名:カスミカメムシ類の移動実態の解明と防除技術の開発
- 予算区分:21世紀5系
- 研究期間:2001~2004年度
- 研究担当者:小林徹也、菊地淳志