TSWV媒介虫判定のためのペチュニアリーフディスクの適用条件
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要約
ペチュニアリーフディスク法によるTSWV媒介アザミウマの判定には、展開葉の出始めから花が数個咲き始めた状態までのペチュニア株が適している。試験に用いるリーフディスクは、従来使われてきたものより小さい直径6mmで適用可能であり、低温で10日間保管できる。
- キーワード:TSWV、アザミウマ、簡易検出、ペチュニア、リーフディスク、適用条件
- 担当:東北農研・地域基盤研究部・害虫生態研究室
- 連絡先:電話019-643-3466、電子メールtsakurai@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境(病害虫)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
TSWV(トマト黄化えそウイルス)はアザミウマ類によって媒介され、農業生産上大きな経済的被害をもたらす。このウイルスの媒介虫を判定するために用いられるペチュニアリーフディスク法は簡便で精度も高いため、現場や研究機関で普及しつつある。しかしながら、試験に用いられるリーフディスクの条件については明確に定められておらず不明な点が多い。そこで、この検定法をさらに強力なツールとするために、TSWVの媒介虫判定に有効なペチュニアリーフディスクの適用条件を設定する。
成果の内容・特徴
- TSWV媒介虫に対するリーフディスクの感度判定は、図1に示したペチュニアリーフディスク法によって行う。TSWV媒介を確認したミカンキイロアザミウマ成虫を1.5 2mlマイクロチューブに入れ、リーフディスク(TSWVに対する高感度品種‘ポロブルー’から作成)を12 24時間摂食させた後、ディスクのみを取り出して各セルに水を入れたマイクロプレート上に移動し、その1 2日後にディスク上の病斑の有無を確認する。したがって、リーフディスクの感度が非常に良い場合、陽性率は100%に近くなる。
- リーフディスク試験に用いるペチュニア株は、展開葉の出始めから花が2 3個咲いた状態までかなり長い生育ステージに渡って、媒介虫の判定が可能である(図2)。
- リーフディスクは従来使われてきた直径13mmのサイズだけではなく10mmおよび6mmでも試験に適用できる(図3)。直径6mmのサイズとすることによって、1枚のペチュニア葉から従来比4倍以上のリーフディスクを得られる上に、48穴マイクロプレートの使用が可能になるため、用いるプレートの枚数を従来(24穴マイクロプレート)の半数に抑えることができる。
- 密閉容器(パラフィルムで開口部を覆ったシャーレまたはマイクロチューブ等)を用いてリーフディスクを12℃または4℃で保管した場合、作成後10日間は試験に使用できる(図4)。
成果の活用面・留意点
- ペチュニアリーフディスク法は全媒介虫を検出できるとは限らないが、同じ個体について2 3回繰り返し本試験法を適用することにより、ほぼ正確な媒介虫率を推定することが可能である。
- 試験に用いるペチュニア品種は‘ポロブルー’または‘セレブリティスカイブルー’を推奨する。葉の厚い品種は感度がやや劣る傾向があるので避けた方が良い。リーフディスク作成のために株から葉を採取する際には、若く十分に展開した緑の濃い葉を選ぶと病斑が明瞭に見られ判定が容易である。
- アザミウマ採集後現地で直ちに試験を行う場合、リーフディスクをあらかじめマイクロチューブ内に入れて持ち運びすると作業が効率よくできる。
- リーフディスクを保管する場合、軽く湿り気を帯びた濾紙を入れると乾燥を防ぐために役立つ。
具体的データ



その他
- 研究課題名:アザミウマ類によるトマト黄化えそウイルス伝搬機構の解明
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1999~2003年度
- 研究担当者:櫻井民人、井上登志郎(岩手大)