大豆は土壌中のダイオキシン類をほとんど吸収しない
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要約
ダイオキシン類を多く含む土壌で栽培した大豆の地上部への土壌由来ダイオキシン類の吸収・蓄積量は、極微量である。
- キーワード:ダイオキシン類、大豆、汚染土壌、吸収・蓄積
- 担当:東北農研・地域基盤部・土壌環境研
- 連絡先:電話019-643-3464、電子メールyukihiro@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
ダイズは様々な環境で栽培されていること、油貯蔵組織が発達しており、他の作物と比較してダイオキシン類の吸収・蓄積能力が高い可能性があることから、ダイオキシン類の蓄積が懸念される。また、食品としての重要性も高い。そこで、土壌に蓄積したダイオキシン類の大豆による吸収および蓄積の有無を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 毒性等量1,000pg/g以下であれば、土壌中ダイオキシン類の大豆の生育への影響は認められない(図1)。
- ダイオキシン類で汚染された土壌(767pg/g)で、汚染土壌と接触しないように栽培した大豆の各部位のダイオキシン類濃度(毒性等量)は、根表皮110pg/g、根芯部1.5pg/g、茎0.41pg/g、葉柄1.0pg/g、葉身4.8pg/g、莢殻0.44pg/g、子実0.0015pg/gであり、低汚染土壌(52pg/g)で栽培した大豆と同程度である。また、莢殻で覆われた可食部である子実の濃度が最も少なく(図2)、自らの体重を越える量の大豆を食しても1日摂取許容量(4pg/kg)を超えないので、食品として問題とならない。
- 安定同位体で標識したダイオキシン(2,3,7,8-[13C12]TeCDD)を添加した土壌で栽培した大豆の葉中の添加ダイオキシン濃度は、無添加土壌で栽培した大豆と変わらない(表1)。よって、葉のダイオキシン濃度に占める根から移行したダイオキシン量は極微量であり、葉身で検出されたダイオキシン類(4.8pg/g)のほとんどは外部からの汚染である。
- 放射性同位体で標識したダイオキシン(2,3,7,8-[14C12]TeCDD)を添加した土壌で栽培した大豆の溢泌液、蒸散水、大豆各部位に放射能は認められない(表1)。
- 以上のことから、土壌中ダイオキシン類はほとんど大豆に吸収されない。
成果の活用面・留意点
- 土壌中ダイオキシン類は大豆にほとんど吸収されないが、ダイオキシン類に汚染された土壌の飛散による作物の汚染や流亡等による河川等への影響が懸念される。
- ダイオキシン類および安定同位体標識ダイオキシンの分析は、財団法人日本食品分析センターに依頼した。
具体的データ


その他
- 研究課題名:油料作物のダイオキシン類吸収・蓄積機構の解明と対策
- 予算区分:環境ホルモン
- 研究期間:1999~2002年度
- 研究担当者:田村有希博