腫瘍壊死因子(TNFα)は大腸菌性乳房炎にみられる全身性炎症反応を誘導する
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要約
組み換え型牛TNFα(rbTNFα)の連日投与は、血漿ハプトグロビン(Hp)濃度と血漿及び乳中一酸化窒素(NO)濃度を上昇させ、乳成分の変化を伴った乳量の低下をもたらす。これらの作用は、TNFαが大腸菌性乳房炎にみられる全身性炎症反応の誘導因子であることを示している。
- キーワード:生理、牛、TNFα、炎症産物、乳房炎
- 担当:東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
- 連絡先:電話019-643-3546、電子メールmendoza@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・畜産、畜産草地、動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
エンドトキシン産生菌由来の乳房炎、なかでも大腸菌性乳房炎は発生率が高く、病態も乳房内に限局せず、全身性の炎症反応を引き起こす。大腸菌性乳房炎罹患牛では、血液及び乳中のTNFαの発現が高まっており、このサイトカインが炎症反応に関わっていることが示唆されている。そこで、泌乳牛へのrbTNFの連日投与が、炎症性物質の産生及び乳量・乳成分に及ぼす影響を明らかにし、TNFαが大腸菌性乳房炎にみられる全身性炎症反応を誘導するかどうか検討する。
成果の内容・特徴
- 分娩後10週目のホルスタイン種泌乳牛に、rbTNF(2.5μg/kg)を1日1回、連続7日間皮下注射すると、急性期蛋白である血漿中のHp濃度が上昇し(図1)、急性相反応を誘導する。
- 炎症指標物質であるNOは、血漿のみならず乳中でも増加する(図2)。
- 乳蛋白質率は低下し、乳脂肪率は増加する(図3)。
- 乳量はrbTNFα投与区が生理食塩水を注射した対照区に比べ約18%減少する(図4)。
- 以上の結果は、TNFαは大腸菌性乳房炎にみられる全身性の炎症反応を誘導することを示している。
成果の活用面・留意点
- TNFαが大腸菌性乳房炎にみられる炎症反応を誘導することをin vivoで証明した初めての知見であり、臨床型乳房炎のメカニズムを解明する重要な情報となる。
- TNFαにより産生が刺激されるインターロイキン(IL)-1β及びIL-6などの他のサイトカインによる影響も検討する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:乳牛及び肉用牛へのサイトカイン投与が内分泌機能及び生産性に及ぼす影響の解明
- 予算区分:サイトカイン
- 研究期間:1997~2002年度
- 研究担当者:櫛引史郎、甫立孝一、新宮博行、上田靖子、嶝野英子、篠田 満、横溝祐一
- 発表論文等:1)Kusibiki et al. (2003) J. Dairy Sci 86: