高脂肪飼料の給与は肉用牛の第一胃内からのメタン産生を抑制できる。

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要約

粗飼料主体給与、あるいは、過度の濃厚飼料多給の肉用牛に、米ヌカ等の高脂肪濃厚飼料を2kg程度給与することで、第一胃からの摂取乾物1kgあたりのメタン産生量を抑制できる。

  • キーワード:動物栄養、肉用牛、メタン、米ヌカ、稲発酵粗飼料、第一胃内発酵
  • 担当:東北農研・畜産草地部・栄養飼料研究室
  • 連絡先:電話019-643-3543、電子メールshino@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

反芻家畜の第一胃内からのメタン産生量は、第一胃内の発酵がプロピオン酸型になると少なく、また、不飽和脂肪酸割合が高く脂肪が多い飼料の給与で低下することが知られている。給与飼料の粗飼料割合は第一胃内発酵に大きく影響し、一般に肥育牛では肥育中~後期は、粗飼料割合が20%以下の過度の濃厚飼料多給となっている。本課題では肉用牛に粗飼料として稲ワラ、および、イネホールクロップサイレージ(イネWCS)を給与し、粗飼料主体および濃厚飼料多給の条件下でメタン産生量を測定するとともに、米ヌカおよびトウフ粕といった高脂肪で自給が可能な濃厚飼料のメタン抑制効果について検討した。

成果の内容・特徴

  • イネWCSのみを維持量給与した場合、摂取取乾物1kg当たりのメタン産生量は33リットル(L)である。米ヌカを重量で2kg(給与飼料中約30%)給与することにより、摂取乾物1kg当たりのメタン産生量は低下する(表1)。
  • 粗飼料(稲ワラ)割合12%以下の過度の濃厚飼料多給条件で肥育牛に給与した場合、摂取乾物1kgあたりメタン産生量は19Lであるが、個体間で変動が大きい。濃厚飼料の一部を米ヌカ1~2kg(濃厚飼料中12.5~25%、給与飼料中11~22%)、または、トウフ粕2kgで代替すると、摂取乾物当たりのメタン産生量は減少する(表2)。
  • 粗飼料(イネWCS)割合が26~42%(平均33%)の濃厚飼料多給で肥育牛に給与したとき、摂取乾物1kgあたりのメタン産生量は25~30Lである。この場合、米ヌカで2kg(濃厚飼料中30%、給与飼料中20%)を代替して給与しても、摂取乾物あたりのメタン産生量の低下は認められない(表3)。
  • 粗飼料主体給与では米ヌカ添加で第一胃内のプロピオン酸比が高まるが(表1)、濃厚飼料多給では変化が小さく(表2、3)、メタン抑制へのプロピオン酸型発酵の影響の程度が異なることが推測される。
  • 摂取乾物1kgあたりのメタン産生量が15L以下と少ない肥育牛は、給与飼料の粗飼料割合が12%以下の場合にみられ、第一胃内ではプロトゾア数が激減している(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 繁殖牛ではトウフ粕給与でもメタン産生の抑制が期待される。未利用資源であるトウフ粕の有効利用につながる。
  • 濃厚飼料多給ではプロトゾア数が激減した粗飼料割合12%程度を「過度」とした。
  • 米ヌカでは夏季の劣化が問題である。また、米ヌカを長期間多給した場合の肉質への影響については未検討である。トウフ粕では製品間で脂肪含量の変動が大きい。

具体的データ

表1 イネWCSの粗飼料主体給与におけるメタン産生量と米ヌカ添加の影響

 

表2 粗飼料割合が10%前後の過度の濃厚飼料多給における濃厚飼料種類とメタン産生量及び第一胃VFA組

 

表3 粗飼料割合が約33%の濃厚飼料多給における米ヌカ添加がメタン産生量、第一胃VFA組成に及ぼす

 

図1 摂取乾物1kg当りのメタン産生量と第一胃 液プロトゾア数

その他

  • 研究課題名:東北地方の水田を活用した肉牛生産におけるメタン産生の把握と抑制
  • 予算区分:委託プロ(メタン産生抑制)
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:篠田満、櫛引史郎、新宮博行、上田靖子、嶝野英子