放牧後の稲ワラ給与と牛肉のカロテン及びビタミンEの関係

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要約

放牧後の約4ヶ月間の稲ワラ給与により皮下脂肪のβ-カロテンは終牧時の1.1から0.32nmoles/gとなり、脂肪色は枝肉取引規格のNo.2となる。胸最長筋のビタミンE含量は3.5から2.7mg/kgとなり、肉色安定に必要な量を下回る。

  • キーワード:放牧、β-カロテン、ビタミンE、脂肪色、肉用牛、食品品質
  • 担当:東北農研・畜産草地部・畜産物品質制御研究室
  • 連絡先:電話019-643-3541、電子メールakiraw@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

食糧自給率の向上、資源循環型農業、環境保全型農業といった農業生産システムが求められる中で、食肉の生産においても放牧地などの地域資源を有効に活用することが重要である。しかしながら、牧草を多給した牛肉は、脂肪色が黄色くなることで市場から敬遠されている。脂肪の黄色は牧草由来のカロテノイド類によるものとされているが、その挙動について詳細な報告は少ない。そこで本研究においては、放牧とその後の稲ワラ給与による舎飼いが牛肉のカロテノイド(β-カロテン)やビタミンE(α-トコフェロール)含量に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • 約6ヶ月間放牧した日本短角種去勢牛において、牛肉中のβ-カロテン、色調(黄色度)及びビタミンE含量は、その後の稲ワラを粗飼料とした舎飼により減少した。稲ワラ給与期間と各項目の関係は以下のとおりである。
    皮下脂肪について
    β-カロテン含量(nmoles/g) = 1.1e-0.0097x(r2 =0.74) ・・・図1
    脂肪黄色度(b*値;%)= 19.0e-0.0078X(r2=0.83) ・・・図2
    ビタミンE含量(mg/kg)=24.4e-0.0053x(r2=0.89) ・・・図3
    筋肉につて
    β-カロテン含量(nmoles/g) = 0.6e-0.0134x(r2=0.92) ・・・図1
    ビタミンE含量(mg/kg)=3.5e-0.002x(r2=0.40) ・・・図3
    (x:稲ワラ給与日数)
    筋肉についての関係式より、β-カロテン含量は終牧から40日の間、肉色安定に貢献すると報告されている0.35nmoles/g以上でる。ビタミンEについては終牧時で有効値とされる3.5mg/kgと同量であり、以後ゆるやかに減少し126日後に2.7mg/kgとなる。
  • 皮下脂肪の黄色度(b*値)とβ-カロテン含量の間には有意な相関(p<0.05)が認められ、b*値からβ-カロテン含量の推定が可能であった。関係式は以下のとおりである。
    β-カロテン含量(nmoles/g)=0.062×(b*値) -0.133 (r 2=0.79, p<0.05)・・・図4
  • 放牧終了時の脂肪色は牛枝肉取引規格ではNo.7に相当し、約4か月間の稲ワラ給与により黄色度が低くなりNo.2に相当するものとなる(図2)。

成果の活用面・留意点

脂肪色の測定は加熱融解後に遠心分離して抽出した皮下脂肪を用いている。枝肉に付着する脂肪では血液などの不純物が混入し、脂肪色に影響することを留意する必要がある。 

具体的データ

図1.稲ワラ給与期間とβ-カロテン含量

 

図2.稲ワラ給与期間と皮下脂肪の黄色度

 

図3.稲ワラ給与期間とビタミンE含量

 

図4.黄色度とβ-カロテン含量

その他

  • 研究課題名:放牧を利用した肥育が牛肉の品質に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:渡辺彰、樋口幹人、上田靖子、葛岡修二(北海道畜試)