東北地域向けリポキシゲナーゼ全欠失だいず新品種「すずさやか」

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要約

だいず「すずさやか」は、「スズユタカ」と同じ成熟期の“中の晩”に属し、ダイズモザイク病抵抗性及びダイズシストセンチュウ抵抗性はともに“強”で、青臭みの原因となる子実中の全リポキシゲナーゼアイソザイムが全て欠失しており、東北地方の栽培に適する。

  • キーワード:青臭み、リポキシゲナーゼ全欠失、ダイズシストセンチュウ抵抗性、ダイズモザイク病抵抗性、豆乳、豆腐
  • 担当:東北農研・水田利用部・大豆育種研究室
  • 連絡先:電話0187-75-1043、電子メールshinji@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畑作物、作物・夏畑作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

国産大豆の定着化のため、特産的な取り組みができる付加価値の高い大豆品種が求められている。通常の大豆の子実中には、脂肪酸を酸化して大豆特有の青臭みを生じさせる酵素リポキシゲナーゼが存在するが、この酵素が完全に欠失し、青臭みが少ない品種(リポ全欠品種)について、東北地域向けにさらに農業特性が改善された品種の育成が期待されている。そこで、東北地域に適した農業特性を有するリポ全欠品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • ダイズモザイクウイルス抵抗性、ダイズシストセンチュウ抵抗性で安定多収、良質の「スズユタカ」を母に、子実中の全リポキシゲナーゼが欠失した「九交355F2(γ)-M4」を父として、農業研究センター(現作物研究所)において人工交配を行い、以後、東北農業試験場(現東北農業研究センター)において、選抜・固定を図り、育成した(表1)。
  • 大豆子実中のリポキシゲナーゼの3つのアイソザイム(L-1,L-2,L-3)が欠失しており、本系統から製造した豆乳や豆腐の青臭みが少なく、官能評価が良好である。また、粗蛋白質含有率は「スズユタカ」とほぼ同等で、豆腐加工適性は良好である。
  • 粒の大きさは“中”、臍色は“黄”、種皮色は“黄白”、裂皮の難易は“中”、外観品質は“中の上”でいずれも「スズユタカ」と同じである。
  • 成熟期は「スズユタカ」とほぼ同じで“中の晩”に属し、栽培適地は東北中南部である。
  • 子実収量、裂莢の難易、最下着莢節位高及び倒伏抵抗性は、いずれも「スズユタカ」とほぼ同じである。
  • ダイズモザイク病抵抗性(A、B、C、Dの各系統に抵抗性)とダイズシストセンチュウ抵抗性が“強”である。

成果の活用面・留意点

  • 秋田県が奨励品種として採用予定である。
  • 他品種との2%程度の混種によっても青臭みを生じるため、採種、収穫・調製時に混種が生じないように注意する。また、リポキシゲナーゼ欠失性は他品種との交雑により失われるため、本品種単一による集団栽培を行うとともに、種子更新を図り種子の純度を維持する。
  • ダイズシストセンチュウ抵抗性であるが、連作は収量の低下や土壌伝染性病害の蔓延を招くので、適切な輪作のもとで栽培を行う。
  • 肥沃地では倒伏しやすいので、密植や多肥栽培を避ける。

具体的データ

表1 「東北135 号」の特性一覧

その他

  • 研究課題名:だいずの新品種の育成
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1990~2002年度
  • 研究担当者:島田信二、高田吉丈、境哲文、河野雄飛、島田尚典、高橋浩司、足立大山、田渕公清、菊池彰夫、
                      湯本節三、村田吉平、酒井真次、喜多村啓介、石本政男