桑葉デオキシノジリマイシンの定量法
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要約
桑葉が有する機能性物質である1-デオキシノジリマイシン(DNJ)はアミドカラム(TSKgel Amide-80、東ソー)で光散乱検出器(ELSD)を使用することで定量が可能である。
- キーワード:桑、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)、光散乱検出器(ELSD)
- 担当:東北農研・作物機能開発部・加工利用研究室
- 連絡先:電話024-593-6178、電子メールkmr@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・流通加工
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
1-デオキシノジリマイシン(DNJ)はブドウ糖の類縁化合物であり、消化管において糖質の分解酵素であるグルコシダーゼの阻害剤として働き、食事後の血糖値の上昇を抑制する。このDNJは桑葉に比較的豊富に含まれ、現在、茶、サプリメントなど種々の形態の“桑DNJ”が商品化されている。しかし、これら商品の多くは、DNJの効能を謳っているにもかかわらず、含量が明記されていない。これは、DNJが一般的な分析カラムで保持されないため、および分子内に特徴的な官能基を持たず、また含量が微量であることから通常のUV検出器などを利用した分析機器ではDNJの定量検出が不可能であったためである。そこで、この様な化合物でも高感度かつ安定に測定することできる光散乱検出器を用いて、DNJの簡易かつ信頼性の高い定量法を提供する。
成果の内容・特徴
- 桑葉の凍結乾燥物(100mg)から、DNJを1mlの50%アセトニトリル/水(6.5mM酢酸アンモニウムを含む; pH5.5)で抽出し、遠心、濾過後、濾液の一部を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)-光散乱検出器(60℃、窒素ガス1.0 Bar)に供する。分離カラムとしてTSKgel Amide-80(東ソー)を用い、カラム温度:40℃、移動相:81%アセトニトリル/水(6.5mM酢酸アンモニウムを含む; pH5.5)、流速:1 ml/minで分析する。
光散乱検出器での検出結果を図1a、同時に測定した質量分析器(MS)でのDNJの検出結果を図1b、そのピークにおけるMSスペクトルを図1cに示す。
- DNJの標準曲線は0.1~32μgの範囲で良好な直線性を示す(図2)。桑の葉におけるDNJ量はおよそ0.1~0.2%(乾燥重)であり、本法により十分な感度で桑DNJの定量が可能である。
- この分析手法で桑葉、茶、サプリメントの分析が可能である。本方法における分析の結果を表1に示す。
成果の活用面・留意点
- 本分析法はDNJのカラムに対する分離原理がイオン交換と考えられ、DNJの保持時間は移動相のイオン強度、pHにより強い影響を受ける。そのため、移動相の調製、および分析試料の調製時には特に留意が必要である。
- DNJの分析が確かなものであることを確かめるため、新しい試料の分析に際しては、高速液体クロマトグラフィー/質量分析器(LC/MS)で、ピークの同定および、純度の検定を行うことが望ましい。
具体的データ





その他
- 研究課題名:東北地域農産物における抗ラジカル成分の生体への効果
- 予算区分:食品総合
- 研究期間:2002~2005年度
- 研究担当者:木村俊之、齋藤裕子(福島県ハイテクプラザ)、仲川清隆(東北大院・農)、山岸賢治、鈴木雅博、
新本洋士、八巻幸二、宮澤陽夫(東北大院・農)