リンゴ花芽形成遺伝子AFL1、AFL2の単離と機能解明
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要約
リンゴ花芽形成遺伝子AFL1、AFL2をシロイヌナズナLEAFY遺伝子のホモログとして単離した。両遺伝子は互いに90%の相同性を持つが、発現時期と発現組織は異なる。これら遺伝子のシロイヌナズナの導入により、早期開花とロゼット軸からの直接的な単生花の発生が見られる。
- キーワード:リンゴ、花芽形成、AFL、LEAFY
- 担当:果樹研・リンゴ研究部・栽培生理研究室
- 連絡先:電話019-645-6155、電子メールmwada@affrc.go.jp
- 区分:果樹・栽培、東北農業・果樹
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
リンゴを含む果樹一般では開花・結実に長い年数が必要である。これは、果樹の生理研究や新品種の育成にとって大きな障害となっている。モデル植物であるシロイヌナズナでは花芽形成遺伝子であるLEAFYが単離されており、この遺伝子と相同なリンゴの遺伝子が花芽形成に働く事が期待された。本研究では、リンゴの花芽形成に関与する遺伝子の単離とその機能解明を行った。
成果の内容・特徴
- 「紅玉」の花芽分化時期の茎頂部からmRNAを単離して、cDNAライブラリーを作製した。シロイヌナズナなどのLEAFY遺伝子の相同部分からプライマーを合成し、逆転写PCR法で、リンゴからLEAFYホモログをクローニングしAFL1とAFL2と名付けた。
- AFL1、2は他植物のLEAFYホモログと相同性を持ち、最も高いものではポプラのLEAFY相同遺伝子PTLFにアミノ酸のレベルで70%の相同性を示す。
- リンゴゲノム中にAFL遺伝子は複数個存在する。さらに、AFL1の発現が花芽分裂組織だけなのに対し、AFL2は栄養成長組織や花器官、根でも見られる(図1)。花芽分化時の茎頂ではAFL2の発現が常時見られるが、AFL1は、形態的変化に伴ったパターンを示す(図2)。
- シロイヌナズナに導入したAFL1、AFL2は早期開花し、ロゼット軸から直接単生花を生じさせる。特にAFL2を導入したシロイヌナズナでは、単生花において形態異常の花が多数見られる(図3)。
- AFL1、AFL2を導入したシロイヌナズナでは、AFL2導入転換体の方がより強い表現型を示す。これらの結果は、両遺伝子のリンゴでの機能的な役割分担を示唆する。
成果の活用面・留意点
- リンゴにAFL1またはAFL2遺伝子を導入し、過剰発現させた場合、早期開花を誘導する可能性があり、リンゴの花芽形成の研究に利用できる。
- AFL遺伝子の働きを理解する上でゲノム中の複数個のAFLのクローニングを行い、AFL1、2との相関を明らかにする必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:花芽形成遺伝子導入による早期花成素材の開発
- 予算区分:組換え植物
- 研究期間:1999~2001年度
- 研究担当者:和田雅人、曹秋芬、古藤田信博、副島淳一、増田哲男
- 発表論文等:1)Wada et al. (2002) Plant Mol. Biol. 49: 567-577