コロニーPCRによるリンゴ根頭がんしゅ病菌の診断法の開発

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要約

病原性アグロバクテリウム菌の検出が可能なPCR用プライマーを新たに設計し、コロニーPCR法による病原性菌株の特異的検出法を開発した。本法により、リンゴ根頭がんしゅ病菌の簡易診断が可能である。

  • キーワード:リンゴ、根頭がんしゅ病菌、プライマー、コロニーPCR
  • 担当:果樹研・リンゴ研究部・病害研究室、農環研・微生物機能ユニット
  • 連絡先:電話019-645-6156、電子メールkoyoshi@affrc.go.jp
  • 区分:果樹・病害虫、東北農業・果樹
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

近年、リンゴ栽培の省力化、軽労化に向けて低樹高のわい化栽培が推進されている。これらの推進に際しては、大量の苗木供給が不可欠であるが、緊急に苗木生産を実施する中で、生産地の苗木生産現場においてリンゴ根頭がんしゅ病が多発生して一般農家への苗木供給が阻害され、わい化事業の推進が懸念されている。そこで、健全苗木供給のために、リンゴ根頭がんしゅ病菌の簡易な診断技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • TiプラスミドおよびRiプラスミドのvirC領域上に位置する診断用のプライマー組(VCF3:5'-GGCGGGCGYGCYGAAAGRAARACYT-3'、VCR3:5'-AAGAACGYGGNATGTT
    GCATCTYAC-3')を設計した。
  • 各種植物等から分離されたAgrobacterium属菌のうち、biovarが異なり、Tiプラスミド、Riプラスミドのいずれかを有する9菌株及び非病原性の1菌株を用いて、本プライマー組(VCF3、VCR3)あるいは従来のPCRプライマー組(VCF、VCR:澤田(1995)ら)を用いコロニーPCRを行ったところ、本プライマー組においてコロニーPCRによる病原性菌株の検出が可能であった(図1)。電気泳動により、これらはサイズが414bpのバンドとして検出される(図1)。
  • 岩手県及び青森県のリンゴ根頭がんしゅ病罹病樹から分離した29菌株を用いて、コロニーPCRを行っところ、トマトに病原性の認められた18菌株を特異的に検出できた(図2)。
  • PCR 用Taq ポリメラーゼ酵素として、主にAmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を用いたが、HotStar Taq(QIAGEN)、Ex Taq(TaKaRa)のいずれを用いた場合も同程度の検出感度である。
  • 上記のプライマー開発により、菌株よりDNA抽出を行うことなく、コロニーPCR法により、リンゴ根頭がんしゅ病菌を簡易診断することが可能である。

成果の活用面・留意点

  • 平板培地での菌株培養後、少なくとも2~28日間、コロニーPCR法による病原菌株の診断が可能である。
  • PCRの増幅サイクル数は35回以上とすることで安定したバンドとして電気泳動で検出することができる。

具体的データ

図1 プライマーの組み合わせとコロニーPCRによる供試菌株の検出

 

図2 リンゴ根頭がんしゅ病罹病部から分離された菌株とコロニーPCR検出

その他

  • 研究課題名:リンゴ根頭がんしゅ病の高精度診断技術の開発
  • 予算区分:交付金、重点事項研究強化費
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:吉田幸二、須崎浩一、澤田宏之(農環研)