耐冷性の強い巨大胚水稲新品種候補系統「恋あずさ(奥羽359号)」

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要約

水稲「恋あずさ(奥羽359号)」は一般品種に比べて胚芽重が約2倍あり、γ-アミノ酪酸含量が高い巨大胚粳種である。熟期が早生の晩で耐冷性が非常に強いことから、東北地域向きの発芽玄米用等の加工用品種として利用できる。

  • キーワード:イネ、恋あずさ、巨大胚、γ-アミノ酪酸、耐冷性、東北地域、発芽玄米
  • 担当:東北農研・水田利用部・稲育種研究室
  • 連絡先:電話0187-66-2773、電子メールmyama@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・水稲、作物・稲
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

消費者の健康志向の高まりから、機能性食品への関心は高く、機能性成分のγ-アミノ酪酸(GABA、ギャバ)が通常の玄米よりも高い発芽玄米の市場が急速に発展している。
巨大胚をもつ玄米は一般品種より機能性成分を高めた玄米として利用できる。これまでに巨大胚を持つ品種として「はいみのり」(2000)、「めばえもち」(2002)が育成されているが、「はいみのり」は極晩生のため東北地方では栽培できず、「めばえもち」は糯品種であるため粳品種とは加工用途が異なる。そこで、東北地域向けの栽培特性を備えた巨大胚粳系統を早期に育成する。

成果の内容・特徴

  • 「恋あずさ」は、巨大胚系統「北海269号」と「奥羽316号」を1989年に交配し、その後、選抜固定をはかってきた巨大胚をもつ粳系統である。出穂期は「あきたこまち」と同程度で、東北中南部では早生の晩に属する。胚芽の大きさは、「あきたこまち」に比べて胚芽長は1.3倍、重量比では1.9倍である(表1)。
  • 「恋あずさ」の玄米に含まれるγ-アミノ酪酸(GABA、ギャバ)含量は「あきたこまち」に比べて6.5倍高く、発芽玄米として利用した場合、その機能性成分の摂取効率が高まるものと期待できる(表1)。
  • 稔実歩合は“極強” の基準品種を大きく上回り、障害型耐冷性は“極強以上”と判定される(表2)。
  • 発芽玄米にして食べる場合、ブレンド割合を減らすか、低アミロース米とブレンドすると食味は比較的良い(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 熟期が東北北部では早生の晩であることから、東北地域や「あきたこまち」が栽培できる東北以南の地域において栽培できる。
  • 出芽率が一般品種と比べて劣るが、育苗の際は播種量を一般品種の重量比で約1.5倍量に増やすことで同程度の苗立ちを確保することができる。
  • いもち病抵抗性は穂いもちが“やや弱”であるため、適期防除を徹底する。
  • 穂発芽性が“やや易”であるために、刈り遅れに注意し適期収穫に努める。

具体的データ

表1 特性一覧

 

表2 穂ばらみ期耐冷性

 

表3 白米及び発芽玄米の食味

その他

  • 研究課題名:寒冷地北部向き直播適応性品種および新形質米品種の育成
  • 課題ID:05-02-03-01-02-04
  • 予算区分:ブラニチ5系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:山口誠之、片岡知守、遠藤貴司、中込弘二、滝田 正、東 正昭、横上晴郁、加藤 浩、
                      田村泰章(国際農研)、小綿寿志(岩手県花巻農改)、小山田善三、春原嘉弘