リモートセンシングによる穂いもち被害程度の評価
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要約
穂いもちの多発した水田圃場を航空機搭載ハイパースペクトラルセンサ(HSS)で計測することにより、506.44±8.56 nm と708.57±8.88 nm のバンドの比演算値から穂いもち被害度を精度良く評価できる。また、航空写真の青と緑の輝度値の比演算値からも被害度の評価が可能である。
- キーワード:穂いもち、リモートセンシング、被害度
- 担当:東北農研・地域基盤研究部・連携研究第1チーム、病害管理研究室、岩手県病害虫防除所、
古川農試・作物保護部
- 連絡先:電話019-643-3408、電子メールtkoba@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境・病虫害
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
イネいもち病は2003年のような冷害時に多発して大きな被害をもたらす。収量に直接的に影響をおよぼす穂いもちは圃場ごとに被害度の変動が大きく、その要因の解析が重要課題となっている。リモートセンシング技術により葉いもち発生状況の広範囲な評価が可能となってきたことから、穂いもちへの適用により圃場調査の効率化が期待される。そこで、リモートセンシングによる穂いもち被害度の評価ならびに圃場レベルでの被害診断の可能性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 2003年9月15日に穂いもちが多発した岩手県北上市と宮城県古川市と三本木町の一般圃場の空中写真を撮影した。北上市は航空写真(銀塩写真)、古川市と三本木町は航空写真とHSS(AISA Eagle:(株)パスコ)の両方で撮影した。イネの生育ステージは糊熟期~黄熟始めだった。
- HSSデータの506.44±8.56 nm と708.57±8.88 nm のバンドの比演算値は穂いもち被害度に比例して大きくなった(三本木町:r2=0.828、図1)。これらの比演算値により、圃場ごとの穂いもち被害度が評価できる。
- 穂いもち被害度と、青色と緑色の輝度値の比演算値は高い相関があり(北上市:r2=0.645、三本木町:r2=0.587)、この比演算値により穂いもち被害度を評価できる(図2)。HSSの方が航空写真より高い精度で穂いもち被害度を評価できる。
- HSSの506.44±8.56 nm と708.57±8.88 nmのバンドの比演算値を用いて、宮城県三本木町の一般圃場の穂いもち被害度を評価した(図1、図3)。
成果の活用面・留意点
- 穂いもち発生要因を解析するのに有効な後ろ向きコホート研究・症例対照研究に利用できる。
- 糊熟期~黄熟始め以外の熟期に、この比演算値で穂いもちの被害程度を識別できるかどうかは不明である。
- 糊熟期以降の穂いもち薬剤防除は効果が低いので、この時期の被害度の評価は薬剤散布の要否判断には利用できない。
- 計測は、雲のない快晴時で太陽高度の高い時間帯に限られる。
- 撮影コストは、航空写真(銀塩写真またはデジタル写真)で115万円、HSSで157万円である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:低温によるいもち病感受性の変動を考慮した発生予察手法の高度化
- 課題ID:05-08-01-01-03-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2003~2005年
- 研究担当者:小林 隆・笹原剛志・石川志保・畑谷みどり・岩舘康哉・神田英司・菅野洋光・石黒 潔
- 発表論文等:T. Kobayashi et al. (2003) J. Gen. Plant Pathol. 69: 17-22