夏秋どりイチゴ生産流通システムの特徴と四季成り性イチゴの導入条件
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要約
夏秋どりイチゴの生産流通システムは「市場型」「市場外型」「民間契約型」「生産者組織契約型」の4類型に分類できる。後者2類型による流通チャネルの短縮化が進む四季成り性品種を導入するには、販売先の管理方法まで含めたシステム構築が必要である。
- キーワード:夏秋どりイチゴ、四季成り性品種、流通チャネル、類型化
- 担当:東北農研・総合研究部・経営管理研究室
- 連絡先:電話019-643-3492、電子メールmamoda@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・経営、共通基盤・総合研究、共通基盤・経営
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
夏秋どりイチゴ栽培を定着・振興させるための解決策の一つは、真夏の長日条件下でも果実形成を行う四季成り性イチゴ品種を導入・利用することである。しかし、四季成り性品種の利用においては、近年、新たな生産流通システムが構築されてきている。そこで、夏秋どりイチゴの生産流通システムを流通チャネルの視点から整理するとともに、イチゴ生産者のアンケート調査から四季成り性品種導入者の特徴と導入条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 種苗会社、生産者等のヒアリング調査から、四季成り性品種の利用を含めた夏秋どりイチゴの生産流通システムは、流通チャネルの長さと解放・閉鎖性によって、「市場型」「市場外型」「民間契約型」「生産者組織契約型」の4類型に分類できる(表1)。
- 夏秋どりイチゴでは、従来の「市場型」や「市場外型」から、近年、四季成り性品種利用の場合を中心として、品種開発をした民間企業の主導により、生産者の系列化を図る「民間契約型」が主体となりつつある。また、一方では生産者自身が組織化することにより周年生産体制の構築と販売部門の内部組織化を図り、生産者主導による「生産者組織契約型」も生まれている(図1)。この流通チャネルの変化により、現状の四季成り性イチゴ品種の生産流通システムは「民間契約型」が大半を占め、「生産者組織契約型」も含めて流通チャネルの短縮化が進んでいる。
- 東北地域のイチゴ栽培農家へのアンケート調査(2004年実施、回収533戸)から四季成り性品種の導入状況をみると、四季成り性イチゴ品種(37戸)は年齢が若く、農業経営の規模拡大に積極的な経営において1990年代後半から導入されている(表2)。
- 導入者の特徴をみると、育苗作業の外部化、栽培技術指導への要望が強く、販売価格の安定を優先し、四季成り性新品種に求める収量水準が高い(表2)。また、四季成り性品種の導入条件として、「高単価」とともに「販売先が確保された契約栽培」を重視する傾向にある(図2)。
- 夏秋どりイチゴ生産における四季成り性品種の導入を促進する条件として、高収量・高品質性を持つ品種開発、栽培技術指導とともに、流通チャネルを見定めた上で、苗生産、販売部門の外部化、販売先の管理方法までを含めた新たな生産流通システムの構築が必要とされる。
成果の活用面・留意点
- 本成果は、四季成り性イチゴ品種の導入を検討する産地や経営で、流通チャネルを構築する際の有効な情報として活用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:夏秋どりイチゴ技術の導入可能性と周年供給条件の解明
- 課題ID:05-04-02-05-34-04
- 予算区分:寒冷地イチゴ
- 研究期間:2003~2005年度
- 研究担当者:澤田 守、藤森英樹、角田 毅、長谷川啓哉