籾数の減少する水稲着粒突然変異系統「RM645」の乾物生産特性
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
農林8号の放射線突然変異系統「RM645」は、着粒籾数が顕著に少ないが、非構造性炭水化物を稈・葉鞘に多量に蓄積する。乾物生産と関わる葉面積当たり窒素含有量が高く、耐倒伏性も高いため、黄熟期乾物生産量が安定して高い。
- キーワード:飼料イネ、着粒突然変異、乾物生産、非構造性炭水化物蓄積
- 担当:東北農研・水田利用部・栽培生理研究室
- 連絡先:電話0187-66-1221、電子メールyosinaga@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・水稲、作物・稲
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
食用水稲では籾数の減少は一般に玄米収量の低下を生じさせることになり、籾数の適正な確保が収量の安定化のための重要な要因となる。一方、近年飼料用やアルコール原料用などに水稲のホールクロップを利用することを前提とした生産および利用のための研究が進められてきている。ホールクロップ利用では地上部全重の確保が重要であり、飼料用の利用では籾の低消化性の問題が指摘されるなど、子実を含んだ籾の重量割合が低い特性が注目されている。そこで、本研究では籾数の減少する着粒突然変異系統に注目し、その乾物生産特性の解明を行う。
成果の内容・特徴
- 農業生物資源研究所放射線育種場において農林8号の放射線突然変異系統として作出された系統群から籾数の少ない着粒突然変異系統「RM645」を選定した
- RM645の1穂籾数は農林8号と比較して約40%少なく、総籾数が減少するため玄米の収量性は低い(表1)。
- RM645は、乾物生産と関わる葉面積当たり窒素含有量が高く、耐倒伏性も高いことから、登熟期の乾物生産に関わる特性に優れ、黄熟期の地上部乾物重が安定して高い(表1、図1)。
- 農林8号では、登熟期間中は稈・葉鞘の非構造性炭水化物含有率が低下するが、RM645では同期間の稈・葉鞘の非構造性炭水化物含有率が高く維持され、稈・葉鞘への乾物分配率が高い(図2、3)。
成果の活用面・留意点
- 籾消化率の低下が懸念されるホールクロップサイレージ用飼料イネ適性品種の育成のための育種材料として利用可能。
- 籾数の少ない品種(籾への乾物分配の小さい品種)の生育特性の解明や、このような品種の栽培法の確立のための試験材料として利用可能。
具体的データ

その他
- 研究課題名:寒冷地における飼料用稲適性の解明と安定多収栽培技術の開発
- 課題ID:05-02-02-01-06-04
- 予算区分:21世紀プロIII系、ブラニチ3系
- 研究期間:2001~2004年度
- 研究担当者:吉永悟志、長田健二、寺島一男、福田あかり
- 発表論文等:長田ら (2004) 日作東北支報 47:87-90.