根系調査のためのマルチカラー染色法
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要約
ポット栽培において、植物が萎凋しはじめる程度に土壌を乾燥させて、地上部から切り花着色液を1.5気圧で加圧して根に注入すると、根系全体を染めることができる。着色液の色を変えれば隣接する植物間の根の関係を明らかにできる。
- キーワード:根の染色、根の密着、根の分布
- 担当:農研機構・東北農研・畑地利用部・畑土壌管理研究室
- 連絡先:電話024-593-6176、電子メールdurian@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
環境保全型農業の推進においては、作物生態を知りそれをうまく活用していくことが重要である。例えば混作やカバークロップの研究において、影響を及ぼし合う植物の根を個体識別して、養水分の競合や相互扶助作用をより詳しく調べることができれば、新しい技術開発につながる可能性がある。そこで、生育中の植物の根を染め分け、識別する方法を開発する。
成果の内容・特徴
- ポットまたは発泡スチロール容器で植物を栽培し、それらが萎凋する程度に土壌を乾燥させる。図1に示すように植物地上部を3.5cm残して切除し、異なる色の切り花着色液(ファンタジー、パレス化学)を1.5気圧で、根が十分に染まるまで注入する。染色液量・時間は、10cmポリポットのトマトで最大10mL 、最長16時間、図1の容器で最大100mL、最長40時間を要する。染色後、土壌を電子レンジで加熱して(6分/1kg土)染料の色を固定し、根を回収する。
- 根系は、図2a、bに示すように、細根も含めて完全に染め分けられる。但し、枯死または傷ついて導管が塞がった根や根毛は染色されない。生理的意義は不明であるが、図2c、dに示すように、2株の根が密着している箇所が見られる。
- 根の生態を解析する例として、図1の容器を用いた播種後107日目のトマトの土壌ブロックごとの根の分布割合を図3に示す。株と株の中間位置は双方の根が拮抗して分布しているが、株の左または右方面は、どちらか一方の株の根がほぼ占有しており、他方の根はごくわずかしか分布していない。
成果の活用面・留意点
- 本法はポットで使用できる。圃場の作物で利用するには、土壌を掘り上げて、染色する方法が考えられる。しかしその場合、切断された根の端から染色液が漏れ出て全体の染まりが悪くなるので、改良の必要がある。
- 染色液量と時間は、目で見ながら判断するか予備試験で決める。染色時間は、土壌水分によって大きく変わる。水分が高く、茎から溢泌液が出る場合は染色液を注入できない。逆に乾燥しすぎると茎、根が枯れて液が浸透しない。よって上記の乾燥程度がよい。
- 根の染色を確認した植物は、トマトの他、双子葉植物の数種類である。トウモロコシなど単子葉植物では、構造上、茎と葉鞘との隙間から液が漏れるので、それを防止する方法が必要である。
- 切り花着色液の成分は特定されていないが毒性はない。18色が市販されている。
具体的データ



その他
- 研究課題名:作物根系の分布および機能解明手法の開発
- 課題ID:05-03-04-01-15-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:村上敏文、島野智之、中嶋美幸、金田 哲、浦嶋泰文