黒ヒエの気管支喘息モデルマウス炎症性アレルギー反応抑制作用

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要約

気管支喘息モデルマウスに精白および未精白(玄ヒエ)の黒ヒエを通常食(AIN-93飼料)に10%混合して飼育し感作処置すると、通常食に比べて気管支肺胞洗浄液中の好酸球数、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)活性、肺組織中のアレルギー反応を増強するサイトカイン(IL-5、IL-13)及び好酸球遊走ケモカイン(エオタキシン)遺伝子の発現がいずれも抑制される。

  • キーワード:黒ヒエ、好酸球、好酸球ペルオキシダーゼ、サイトカイン、ケモカイン
  • 担当東北農研・作物機能開発部・品質評価研究室
  • 連絡先:電話019-643-3513、電子メールwata@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・流通加工
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ヒエは岩手県を代表する特産物であり、他の雑穀とともに健康食品として認識されている。最近はコメやコムギに対するアレルギー患者の代替食として利用・注目されているが、ヒエ(黒ヒエ)には特徴的な抗酸化物質が含まれていることは明らかにされているものの、健康機能の科学的根拠については十分に明らかにされていない。
そこで、ヒエの摂食がアレルギー性炎症反応に及ぼす影響を、気管支喘息モデルマウスを使用して明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 気管支喘息モデルマウス(NC/Nga)にAIN-93飼料(通常食)を給餌、オボアルブミン(OVA)で感作した(図1)通常食感作(IC)群の気管支肺胞洗浄液中の白血球数は、通常食非感作(NC)群に比較して有意に増加する。また、黒ヒエ食群(精白黒ヒエ食感作(IMP)群、未精白(玄ヒエ)黒ヒエ食感作(IMW)群)で好酸球数増加は抑制傾向にあり、特にIMW群ではIC群に比べ有意に増加が抑制される(表1)。
  • 好酸球の組織障害活性の指標である気管支肺胞洗浄液の好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)活性はIC群で高くなり、IMW群で上昇抑制傾向が認められる(図2)。
  • 肺組織におけるアレルギー反応を増強するサイトカイン(IL-5、IL-13)及び好酸球遊走活性を有するケモカイン(エオタキシン)遺伝子の発現は、いずれも非感作群と比較してIC群で発現量が増加しており、これに対して黒ヒエ食群でIC群より遺伝子発現が抑制される傾向となり、黒ヒエ食群ではIMW群でより抑制が強い傾向にある(図3)。

成果の活用面・留意点

  • AIN-93飼料:米国国立栄養研究所から発表されたマウスあるいはラットを用いる栄養実験のための精製飼料。黒ヒエ食群ではAIN-93飼料に黒ヒエを10%混合し、タンパク源であるカゼインを減じている。
  • サイトカイン、ケモカイン遺伝子の発現解析には、TaqMan primer probeセットを使用。
  • 黒ヒエにはIL-1、IL-6等の炎症性サイトカインの産生抑制効果が報告されているN-(p-クマロイル)セロトニン、抗アレルギー性が報告されているルテオリンが含まれていることを明らかにしているが、これら物質のみを摂取させた動物実験は実施していないため、本試験の結果に対する寄与は明らかでない。
  • ヒエの抗アレルギー性の確認には、さらにヒトでの試験が必要である。
  • ヒエを機能性食品素材として利用するための知見となる。

具体的データ

図1 飼育スケジュール

 

表1 気管支肺胞洗浄液中白血球数

 

図2 気管支肺胞洗浄液好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)活性

 

図3 肺組織中の炎症性サイトカイン(IL-5、IL-13)及びケモカイン(エオタキシン)発現比

その他

  • 研究課題名:雑穀類の免疫調節機能に及ぼす影響の解明
  • 課題ID:05-06-06-01-03-04
  • 予算区分:食品総合
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:渡辺 満、佐藤倫子、清水 恒