桑葉に含まれる血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシン量を高める調製加工法

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要約

1-デオキシノジリマイシン(DNJ)は、桑葉に含まれる血糖値上昇抑制物質である。製品中のDNJ含量は、DNJを高含有する桑葉原料とDNJ損失の少ない加工法を組み合わせることにより、従来製法に対し約10倍に高めることができる。

  • キーワード:桑、血糖値上昇抑制物質、1-デオキシノジリマイシン、DNJ
  • 担当:東北農研・作物機能開発部・加工利用研究室
  • 連絡先:電話024-593-6178、電子メールkmr@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・流通加工
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

近年、α-グルコシダーゼ阻害剤(α-GI)が、食後の高血糖及びインスリン過分泌を抑制することで2型糖尿病発症を予防しうるこ とが示され、α-GI 食品が注目されている。桑葉は1-デオキシノジリマイシン(DNJ)と呼ばれるブドウ糖の構造類似物質を含み、強力なα-GI作用を有するため、α-GI 食品素材として注目される。DNJは定量が困難であり、DNJを生かす桑葉の商品開発は十分には行われていなかった。そこで、我々は光散乱検出器と親水相 互クロマトグラフィーを組み合わせたDNJの定量法1)(HILIC-ELSD法)を開発した。これを活用し、DNJを高含有する桑葉食品を製造開発することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 桑葉原料のDNJを高含有させるためには、以下の素材条件を満たす必要がある。
    1) 品種:「鶴田」「はやてさかり」は現在の主原料である「一ノ瀬」「改良鼠返」よりも高含有するため(図1)、これらDNJ高含有品種を使用する。
    2) 葉の採取部位:枝先端部の葉はDNJを高含有するため2)、枝先端部の葉(枝先端より30cm以内の葉が望ましい)を使用する。桑茶用の栽培を行い、茶刈機を使用することにより効率的に採取することが可能である(図2)。
    3) 葉の採取時期:6、7、8、9月の葉では8月の葉が最もDNJを高含有するため2)、 8月の葉を使用する。
  • 加工工程のDNJ損失をなるべく抑制するためには、以下の条件を満たす必要がある。
    1) ブランチング:DNJは溶脱しやすく煮沸処理では大きく損失するため、高温蒸気処理によるブランチングを行う(図2)。
    2) 製茶法:乾燥工程ではDNJが若干損失するが、経済上の理由により熱風乾燥が良く、緑茶用の製茶機が活用できる(図2)。
    3) エキス抽出法:100、75、50、25、0%の比率のエタノール/水抽出溶媒のうち、25%エタノール/75%水で抽出するとDNJが最も高濃度で抽出される(図3)。
  • 3. 1,2の条件を満たすことにより、DNJを桑茶で約5倍、エキスで約10倍、従来製品よりも高含有する製品製造が可能である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • DNJを高含有する製品開発のためには、上記の条件がすべて揃っていることが望ましいが、製造現場の状況に合わせ一部条件が満足されてなくとも、従来製法よりもDNJを高含有する製品製造が可能である。
  • DNJを高含有する桑葉食品の開発により新たな需要が喚起され、遊休桑園の解消と、中山間地域に新たな産業をおこす基盤となることが期待される。
  • 商品にする場合には、関係法令に基づいた手続きが必要である。

具体的データ

図1 DNJを高含有する桑葉品種

 

図3 桑葉エキス抽出エタノール濃度

 

図2 DNJ高含有桑葉製品の工程(桑茶)

 

図4 DNJ高含有桑葉製品のDNJ含有量

 

その他

  • 研究課題名: 血糖値改善効果を有する桑葉製品開発
  • 課題ID: 05-06-07-01-16-05
  • 予算区分: 競争的研究資金(高度化事業)
  • 研究期間: 2004∼2005年度
  • 研究担当者: 木村俊之、仲川清隆(東北大)、後藤裕子(福島県ハイテクプラザ)、 野木照修(福島県農試)、小島芳弘(ミナト製薬)、山岸賢治、鈴木雅博、老田茂、 宮澤陽夫(東北大)
  • 発表論文等:
    1) Kimura et al. (2003) J.Agric.Food.Chem. 52:1415-1418
    2) 木村ら、H16東北農業研究成果情報
    3) 木村ら、特願2005-254708