7Sグロブリンα'およびαサブユニット欠失ダイズ判別用DNAマーカー

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要約

ダイズの主要アレルゲンタンパク質7Sグロブリンαサブユニットおよび高11S性に関わるα'サブユニットの有無をPCRで判別できるDNAマーカーである。

  • キーワード:ダイズ、アレルゲン、高11S、αおよびα'サブユニット、DNAマーカー
  • 担当:東北農研・作物機能開発部・生物工学研究室、東北農研・水田利用部・大豆育種研究室(DNAマーカーチーム)
  • 連絡先:電話019-643-3514、電子メールgoro@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生物工学、作物・生物工学
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

ダイズ貯蔵タンパク質のひとつである7Sグロブリン(β-コングリシニン)は、α'、αおよびβの3種類のサブユニットから構成さ れており、そのうちのαサブユニット(以下、7Sαと略記)は、ダイズ陽性のアトピー性皮膚炎患者のうち25%の患者の血清によって検出された主要アレル ゲンである。また、7Sグロブリンは、その含量と負の相関が認められる11Sグロブリンに比べて栄養価や加工適性に劣ることから、7Sαおよびα'サブユ ニットを欠失させて相対的に11Sグロブリンの含量を高めることで品質を向上したダイズ品種が開発されている。そのような背景から、7Sαおよびα'欠失 ダイズ品種の効率的な育成、およびその収穫物や加工物への異品種混入検査、などに利用できる簡易判別技術の開発が求められている。

成果の内容・特徴

  • 7SαはCG-2およびCG-3遺伝子にコードされているが、1994年に東北農業試験場(当時)において作出された7Sα欠失系統は、CG-3遺伝子を欠失するとともに、CG-2遺伝子内に4塩基の挿入が生じた結果、正常なタンパク質が作られなくなっている(図1)。
  • 上記のCG-2遺伝子の変異の有無、CG-3遺伝子変異の有無、7Sα'をコードするCG-1遺伝子の有無を判別できるPCR用プライマーセットである(表1)。
  • Aセットでは6種、Bセットでは4種のプライマーを混合し、それぞれのセットを用いて図2に示す手順でPCRを行うことで、7Sαおよびα'の有無を判別できる。
  • 本マーカーは、従来のタンパク質による方法に比べて分析試料として使用できる範囲が広い点、収穫物および加工物における異品種混入の検出感度が高い点(図3)、において優れている。

成果の活用面・留意点

  • 7Sαおよびα'欠失性は劣性の遺伝子によって支配されており、初期世代における選抜の効率が低いが、本マーカーにより7Sαに関してはヘテロ個体の選抜が可能である。
  • ダイズ種子および加工物から抽出したDNAでは、CG2MFあるいはCG23FとCG23Rによる産物が得られにくい場合があり、プライマー濃度等の調整が必要である。
  • 本成果はタカラ社Ex Taq及びABI社GeneAmp(r) PCR system 9700を用いて得られたものであり、他社酵素やPCR器機を使用する場合は、PCR条件などの再検討を要する。

具体的データ

図1 7Sαをコードする遺伝子の構造、点線は遺伝子全体の欠失を表す。7Sα欠失品種「ゆめみのり」は、その原品種「刈系434号」と比べてCG-2遺伝子内に4塩基の挿入変異がある(矢印)

 

表1 7Sαおよびαサブユニットの有無を判別するプライマーセット

 

図2 7Sαおよびα'欠失性判別用マーカーのPCR条件

 

図3 7Sαおよびα'の有無を判別するプライマーセットを用いた異品種混入の検査例

 

その他

  • 研究課題名:だいずの新品種の育成
  • 課題ID: 05-02-06-01-01-05
  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 石川吾郎、中村俊樹、高田吉丈