播種間隔精度が高く簡単な繰出し機構の2段傾斜ベルト式播種機

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要約

2段重ねに傾斜させた穴径の異なるベルトを同調回転させて種子を受け渡し、長細い開口板で切った溝に低い位置から播種する簡単な機構の播種機である。アップダウンベルト式播種機より正確な間隔に播種できる。

  • キーワード:野菜、播種、播種間隔、播種精度
  • 担当:東北農研・野菜花き部・野菜花き作業技術研究室
  • 連絡先:電話019-643-3414、電子メールdob927@affrc.go.jp
  • 区分:東北農研・作業技術、野菜花き、共通基盤・作業技術、野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農業従事者の高齢化が進み、多大な労働時間を費やす間引き作業が敬遠され、1粒点播が行われるようになってきたが、播種間隔精度が 低く、収穫物の大きさがばらつく原因となっている。現在、代表的な播種機として、真空播種機とベルト式播種機があるが、真空播種機は精度は高いが高価であ り、ベルト式播種機は安価であるが、播種間隔精度が低い。そこで簡単な機構で正確な間隔に1粒播きできる播種機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 2段傾斜ベルト式播種機は、種子をホッパーから1粒ずつ搬送するベルト搬送部と播種溝を切る開口板からなる(図1)。ベルト搬送部の上カセットのベルトは播種する野菜種子の大きさに合わせたセル穴のものであり、下カセットのベルトは直径16mmの半球形のセル穴のものである。
  • ホッパーの種子は上カセットのベルトのセル穴によって1粒ずつ上方向に運ばれ、上下カセットのベルトが重なったとこ ろで同調して回転する下カセットのベルトのセル穴に渡される。その後下カセットのベルトによって下方向に運ばれ、下の折り返しが終わったところで播種され る。なお、カセット上部と下部には種子を確実に搬送するためにセロハンカバーを密着させて取り付けてある(図2)。
  • これによって、ベルト式播種機の欠点である種子のセル穴からの脱落タイミングのばらつきがなくなる。また、種子の落下位置を地上部近くまで下げることができるので、種子誘導管が不要となり、誘導管内での衝突による播種間隔のばらつきを防止することができる。
  • 播種機を台に固定してモータで駆動軸を回転させて、ホウレンソウ種子(品種:アクティブ)を作業速度0.36m/s で播種作業を行った場合、播種間隔精度(播種間隔の標準偏差)は1.8cmであり、真空式播種機の2.3cm、アップダウンベルト式播種機の2.7cmと比較し て精度が高い(図3)。
  • ほ場においてニンジン種子(品種:向陽2号、コーティング種子)を作業速度0.34m/sで播種作業を行った場合、播種間隔精度は2.3cmであり、真空式播種機の3.0cm、アップダウンベルト式播種機の3.4cmと比較して精度が高い(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 傾斜ベルト式播種機で播種可能な野菜種子の播種に利用できる。
  • 上カセットのベルトは播種する野菜種子の大きさに合わせたセル穴を使用する。
  • 本播種機は作業速度0.56m/s以下に適用できる。

具体的データ

図1 2段傾斜ベルト式播種機

 

図2 繰出し機構の流れ

 

図3 繰出し機構の播種間隔精度

 

図4 播種機の播種間隔精度(ほ場調査)

 

その他

  • 研究課題名: 野菜作における精密播種技術の開発
  • 課題ID: 05-04-02-02-09-05
  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 松尾健太郎、屋代幹雄、安場健一郎
  • 発表論文等: 特許『点播用精密播種装置(特開2005-333895)』