北東北地域における松林を使った日本短角種繁殖牛の冬期屋外飼養
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要約
松林を使う冬期屋外飼養下では、日本短角種繁殖牛群は寒冷条件が緩和される林内を中心に滞在する。林内に糞尿の75%が還元され、体重維持に問題なく、北東北地域でも冬期屋外飼養が有効である。
- キーワード:日本短角種、冬期屋外飼養、林地、日周行動、糞尿、肉用牛
- 担当:東北農研・畜産草地部・放牧管理研究室
- 連絡先:電話019-643-3562、電子メールnashi@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・畜産、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
夏期放牧される日本短角種繁殖牛の飼養を冬期においても林地等の屋外で実施できれば、地域資源の活用による飼養施設費や糞尿処理作
業の軽減などを通して生産に寄与すると考えられる。そこで給餌場とそれに隣接する松林のある屋外条件において、冬期間(12月∼4月)の牛群の行動や林地
への糞尿還元量および家畜体重の推移などを明らかにする。
成果の内容・特徴
- 松林内(樹種はアカマツ、林床はアズマネザサが優占する疎林、パドックを含む総面積2.7ha)は、最低気温が給餌場(150m²、有蓋、吹き曝し)に比べて高めに推移し、積雪は給餌場脇より少なく、寒冷条件が緩和される傾向がみられる(図1、2)。
- 給餌場と林地を挟んで250m離れた位置に飲水場を設けた配置条件(図1)では、牛群は2回の給餌前後を除く一日の約7割の時間(平均16.6時間)、林内に滞在する。
- 松林内への家畜の糞尿還元率は75%と推定され(表1)、糞尿処理の軽減化が期待できる。なお、この率から求めた冬期間の松林内への窒素還元量は、本供試飼養頭数(21頭、期間平均体重514kg)では152.9kg/haと推定される(表1)。
- 給餌場で1日1頭当たり乾草(乾物7.5kg)および配合飼料(1kg)を給与すると、成牛の体重は開始時より28kg増え、また、育成子牛は52kg増加し日増体量は0.5kgとなり、家畜の体重維持に問題はない(表2)。
成果の活用面・留意点
- 積雪が最大50cm程度の北東北地域において、日本短角種繁殖牛の冬期屋外飼養の際の参考として活用できる。
- 東北農研内標高差12mのなだらかな起伏地形の松林に飲水場を設けた条件における3ヶ年の冬期間の調査結果である。なお、3年間の屋外飼養実施後の4月∼10月における松林に最近接部15mの小川(図1-A点)の水質(pH、BOD、SS、DO、大腸菌数)は、河川類型AA∼Aの上位ランク(環境基準)に該当し問題はなかった。
- 全頭が林地を経験していない牛群では、林地利用開始直後の数日間は飲水場への誘導が要る。
具体的データ




その他
- 研究課題名:
日本短角種の冬期屋外飼養技術の開発
- 課題ID:
05-01-04-*-20-05
- 予算区分:
交付金プロ(日本短角種)
- 研究期間:
2002∼2005年度
- 研究担当者:
梨木守、成田大展、東山由美
- 発表論文等:
1) 梨木ら(2003)、東北農業研究 56, 113-114.
2) 梨木ら(2004)、東北農業研究 57, 125-126.