細断型ロールベーラを活用した予乾体系における稲発酵粗飼料の品質向上技術

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要約

稲発酵粗飼料の予乾収穫・調製作業体系において、細断型ロールベーラを活用することにより、材料草が高密度梱包され、それに伴い乳酸発酵が促進され、長期貯蔵時のサイレージ品質の安定性を向上できる。

  • キーワード: 細断型ロールベーラ、飼料イネ、サイレージ
  • 担当:東北農研・畜産草地部・飼料生産研究室
  • 連絡先:電話019-643-3564、電子メールhkawamo@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

細断された飼料用トウモロコシを高密度なロールベールに成形できる細断型ロールベーラの普及が始まっている。一方、飼料イネの生産 量が増加するにつれ、長期間にわたって安定した品質が保持できる調製貯蔵技術が求められている。そこで、細断型ロールベーラを予乾収穫体系における稲発酵 粗飼料の調製に活用した場合の品質向上効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 細断型ロールベーラによって、水分60∼30%の細断された飼料イネは重さ240∼190kg、乾物密度190∼250kg/m³程度の高密度なロールベールに成形できる(図1)。
  • 予乾体系では従来型の稲発酵粗飼料においても水分低下によって酪酸生成は抑制されるが酵母などによるエタノール生成 は抑制されない。一方、細断された材料草が高密度に梱包された細断型稲発酵粗飼料では乳酸発酵が促進されるとともに、長期貯蔵した場合でもエタノールが低 く、酵母などによる変敗リスクが低減する(図2)。
  • 低水分域においても、細断型稲発酵粗飼料は乳酸含量が高く、pHが4程度まで低下するが、この乳酸発酵による酸性化は肥育牛の採食性に悪影響を及ぼさない(図3)。
  • 細断型稲発酵粗飼料は、高密度梱包と乳酸発酵の促進によるpH低下によって、発酵損失やカビによる破棄量が少なく、長期貯蔵した場合でも乾物損失が低減される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 開発中の刈取り機構を持つ自走タイプを含め、細断型ロールベーラの稲発酵粗飼料調製への利用を促進させ、稼働率の向上が期待できる。
  • 現在市販されているトラクタけん引タイプは、ハーベスタなどの細断収穫体系が整っていることが不可欠であり、伴走収穫を行う場合には地耐力が確保された大区画圃場に限定される。

具体的データ

図1 ロールベールの乾物密度

 

図2 発酵産物の含有率

 

図3 肥育牛による採食量

 

図4 10カ月貯蔵後のカビによる破棄量と全乾物損失量

 

その他

  • 研究課題名: 長大型飼料作物用細断型ロールベーラを活用した飼料稲の高品質収穫・調製技術の開発
  • 課題ID: 05-05-06-02-18-05
  • 予算区分: 交付金プロ(寒冷地飼料イネ)
  • 研究期間: 2004∼2005年度
  • 研究担当者: 河本英憲、大谷隆二、山口弘道、渡邊寛明、田中治、出口新、魚住順
  • 発表論文等: 河本ら(2005) 日草誌51(2):199-201