日本短角種の複数の産肉形質を同時にバランスよく改良する方法
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要約
日本短角種のロース芯面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さ、日増体量を生産者の希望に応じて改良するための指標として、総合経済育種価を求める式を開発した。さまざまな種畜選抜の機会に各形質に応じた総合経済育種価を利用すれば、効率的に改良を進められる。
- キーワード:肉用牛、日本短角種、枝肉形質、選抜の指標、遺伝的改良
- 担当:東北農研・畜産草地部・上席研究官
- 連絡先:電話019-643-3556、電子メールfumi@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・畜産、畜産草地
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
日本短角種(短角)による牛肉の生産は、現在、我が国に降り注ぐ太陽エネルギーに立脚した、永続的で循環的な畜産の典型である。国
際的な食糧の不足が予測されるいま、短角による牛肉生産を発展させてゆくことが必要である。そこで、岩手県が収集して整理した枝肉記録6,492頭分とそ
の血統データ53,347頭分を用いて、生産者が改良を望んでいるロース芯面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さ、成長の速さを、生産者の希望にしたがって遺
伝的に改良するための総合経済育種価を作成し、その活用法を提示する。
成果の内容・特徴
- 生産現場で十分な頭数の肥育、枝肉、肉質等の成績と種畜を含む血統情報を収集する。これを用い、改良したい形質について遺伝率と遺伝および表型相関を求める(表1)。
- 遺伝率、遺伝及び表型相関を用いて選抜指数式を作成し、最も実現可能性のある改良目標を決定する(表2)。
- 改良目標と遺伝率、遺伝および表型相関を用いて経済重み付け値を算出する。そして、各個体、各形質の育種価を推定し対応する経済的重み付け値を乗じてその和をとり総合経済育種価(H)を求める(式1)。
- 総合経済育種価の頻度分布図を作成し、歪度を求める。分布が右に尾を引き、歪度が正であれば育種改良が可能であり、
この数値の高い個体から順に種畜として選抜する。日本短角種についてロース芯面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さおよび日増体量の希望改良量をそれぞれ
2.7cm²、0.8mm、-4.5mm、100g/日とした時の各形質に対する15頭以上の後代記録を持つ種雄牛の総合経済育種価を計算し、その頻度分
布を示した。この分布は、右に尾を引く分布であり、高い総合経済育種価に向かっての改良の可能性を示している(図1)。
成果の活用面・留意点
- 雄子牛の中から直接検定にかける個体を選抜するとき、直接検定および現場後代検定合格牛の中から種雄牛を選択すると
き、一般の繁殖雌牛の中からエリート雌牛群に入れる個体を選ぶとき、エリート雌牛群に残す牛を選ぶとき、繁殖農家で後継牛を選ぶときのそれぞれに応じた総
合経済育種価を求めて選抜する。それにより、牛を選抜するあらゆる段階で、目標に沿った改良を促進することができる。
- 直接検定と現場後代検定の能力判定基準は県の改良方針により定められている。したがって、地域牛群の改良には、県が選抜した種雄牛の中から、どの牛を選んで使うかを決定するさいに、本研究の結果を活用することになる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:フィールド検定情報を用いた遺伝的能力の推定とそれに基づく産肉能力改良法の開発
- 課題ID:
05-01-04-*-18-05
- 予算区分:
交付金プロ(日本短角種)
- 研究期間:
2002∼2005年度
- 研究担当者:
田村良文、西田朗(東北大)、山崎武志(東北大)、横橋裕介(東北大)