幼穂形成以前の水温は水稲の穂ばらみ期耐冷性に作用する
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要約
穂ばらみ期の低温による障害型不稔は、幼穂形成以前(栄養成長期)の低水温により増加する。栄養成長期が低気温であっても水温が高いと障害型不稔が減少する。
- キーワード:
水稲、温度履歴、穂ばらみ期、低温障害不稔、耐冷性、水管理、冷害
- 担当:東北農研・地域基盤研究部・連携研究第2チーム
- 連絡先:電話019-643-3462、電子メールmok@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境、共通基盤・農業気象
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
水稲の穂ばらみ期耐冷性の強化は、寒冷地で水稲を安定栽培する上で最も重要な課題である。これまでの研究で、幼穂形成から小胞子初
期までの幼穂の温度を高く維持すると、穂ばらみ期の低温による障害型不稔が軽減することが明らかにされ、幼穂の温度維持のための前歴深水管理技術が普及し
ている。一方、冷害対策として健苗育成や初期生育の重要性が指摘されているが、幼穂が形成される以前(以下、栄養成長期)の栽培履歴と耐冷性との関係は未
解明である。本研究では、栄養成長期の温度履歴に着目し、水温ならびに気温の処理が耐冷性に及ぼす影響を評価する。
成果の内容・特徴
- 栄養成長期の低水温処理(図1)は、不稔歩合を増加させる(図2)。晩播では栄養成長期の水温が上昇するので、不稔歩合が低下する。
- 栄養成長期の低気温処理も不稔歩合を増加させるが、低気温下でも水温を上昇させると不稔歩合が低下する(図3)。
- 不稔歩合の変動は、栄養成長期の水温で説明できる(図4)。
- 従って、栄養成長期の水温履歴は耐冷性に強く作用する。このことは栄養成長期の水温管理を高度化することで耐冷性を高める可能性を示唆する。
成果の活用面・留意点
- 本研究はポット条件の結果であるため、圃場条件での検証が必要である。
- 本成果を栽培管理に反映させるにあたり、温度履歴の作用が始まる発育ステージの特定、その際の限界温度の定量化が望まれる。加えて水温上昇技術の開発も望まれる。
- 本成果は、穂ばらみ期耐冷性のメカニズム解明にも有用である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:
温暖化と大気CO2増加が農作物と病虫害に及ぼす影響の解明
- 課題ID:
05-08-04-01-04-04
- 予算区分:
環境保全(地球環境保全)、科研費
- 研究期間:
2002∼2004年度、2005∼2007年度
- 研究担当者:
下野裕之、岡田益己