市販キットを利用した簡易ATP測定による淡色黒ボク土壌の土壌バイオマス評価

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要約

淡色黒ボク土壌をリン酸緩衝液に懸濁し、その懸濁液に市販キットのATP消去剤、ATP抽出試薬および発光試薬を加えてルミノメーターで測定すると、土壌中のATPを迅速に測定できる。農業現場において簡便・迅速に土壌バイオマスを評価可能になる。

  • キーワード: ATP、土壌バイオマス、ルミノメーター、淡色黒ボク土壌
  • 担当:東北農研・畑地利用部・畑土壌管理研究室 連絡先:電話024-293-6176、電子メールyura@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

土壌バイオマスは、土壌生物性の重要な量的指標と考えられているが、簡易で迅速かつ現場で測定できる方法は無い。食品関連産業分野 で清浄度測定のために市販されている比較的安価なキットを利用して、前培養無しおよび超音波破砕機を利用することなく迅速に、かつ安定してATPを測定す ることで土壌バイオマスが簡便に評価できるか検討する。

成果の内容・特徴

  • 土壌3gに総量が300mLになるように0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加え、5分間振とうする。プラス チックチューブに懸濁液を1.0mL採取する。それにATP消去剤を0.1mL添加し、攪拌した後、30分間室温に静置し、細胞外ATPを除去する。静置 後、その0.1mLを採取し、ATP抽出試薬を0.1mL添加し、20秒後に発光試薬を0.1mL添加し、直ちにルミノメーターで発光量(RLU値)を測 定する(図1)。あらかじめ、RLU値とATP濃度の検量線を作成しておく。測定に要する時間は1行程30分弱である。
  • 本測定法は、従来法によるATP量よりも高い値がでるが、従来法と同様に土壌中のATPを測定可能である(図2)。有機物を多量連用(40 t ha-1以上)し、未分解の有機物が多量に残存しているような土壌には適用できない場合がある。
  • 前培養(25℃で7日間)した土壌を簡易法で測定すると、前培養無しの場合と相関が高いが、測定値はさらに高くなる(図3)。簡易法による測定値の変動係数の平均は、前培養無しでは0.32、前培養有りでは0.47であり、データーのばらつきは同等以下である。
  • 簡易法で測定したATP量は、土壌中のバイオマス炭素と正の相関が認められる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • コマツナの有機物施用試験を行っている圃場(淡色黒ボク土壌・清水統)より、コマツナの収穫直後に土壌を採取し検討した結果である。
  • 本キットはA社より市販されている。1検体あたりの費用は250円である。
  • 簡易測定法で測定したATP値は従来法によるATP値よりも高く出るため、バイオマス炭素量に換算するには新たな換算係数が必要である。また、換算係数は土壌によって異なる可能性がある。
  • 従来のATP測定法と同様に、有機物施用直後の易分解性有機物が多量に残存している土壌には応用できない。
  • 本簡易測定法は前培養や超音波破砕機等が必要でなく、現地圃場において簡便・迅速に土壌バイオマスを測定できる。測定機器も比較的安価であるために、普及センターレベルで土壌バイオマスの測定が可能となる。

具体的データ

図1 ATP測定法 簡易法と従来法の比較

 

図2 従来法と簡易法によるATP測定値の関係

 

図3 前培養の有無によるATP測定値の関係(簡易法)

 

図4 簡易法ATP量とバイオマス炭素量との関係

 

その他

  • 研究課題名: 有機農法実践圃場における畑土壌の微生物性評価
  • 課題ID: 05-03-04-01-12-05
  • 予算区分: 交付金プロ(有機農業)
  • 研究期間: 2003∼2005年度
  • 研究担当者: 浦嶋泰文、中嶋美幸、金田哲(特別研究員)、村上敏文