繊毛虫検出用プライマーの作成及びそれを用いた繊毛虫の検出

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要約

繊毛虫に特異的な塩基配列を明らかにしPCR増幅用プライマーを作成した。それを用いて、土壌など環境中のDNAを増幅することにより、繊毛虫の存在を検出できる。

  • キーワード: 繊毛虫、プライマー、18SrRNA、PCR
  • 担当:東北農研・畑地利用部・畑土壌管理研究室
  • 連絡先:電話024-593-6176、電子メールdurian@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

繊毛虫は、微生物の摂食者として生態系の物質循環に関与し、有機物の分解促進に大きな役割を果たしている。また、環境浄化指標微生 物としても有望視されている。しかし、これまで土壌など環境中に存在する繊毛虫を簡便、迅速かつ確実に検出できる手法は報告されていない。そこで、繊毛虫 に特異的な塩基配列を利用したPCR増幅のためのプライマーを作成し、環境中、特に土壌中に存在する繊毛虫の検出を試みる。

成果の内容・特徴

  • 土壌や水系などに生息する代表的な繊毛虫33種および他の原生動物等49種の18SrRNA遺伝子の塩基配列をEMBL/Genebank/NCBIで検索、比較することにより、図1のように、繊毛虫において保存性が高い領域を見いだし、それに基づいて繊毛虫特異的プライマー(5'-GATGGTAGTGTATTGGAC)を作成し、CS322Fと名付けた。
  • 土壌および培養系由来の5種類の繊毛虫を含む13種の生物のDNAを対象に、CS322Fおよび一般に知られている 真核生物用のアンチセンスプライマー、EU929R(5’-TTGGCAAATGCTTTCGC)を用いてPCR増幅を行ったところ、目的の約600bp のバンドが、繊毛虫でのみ検出されたので、CS322Fの有効性が確認された(図2)。
  • 土壌から抽出したDNAを対象にCS322FおよびEU9292Rのプライマーセットを用いてPCR増幅を行うと、約600bpの位置にバンドが確認され、繊毛虫の存在を検出できる(図3)。PCRは、プライマーセット、dNTPs、Taqポリメラーゼ、鋳型DNAを含むバッファーを94℃15秒、64℃15秒、72℃1分を1サイクルとして25サイクル行う。

成果の活用面・留意点

  • 本プライマーセットは、繊毛虫以外の生物DNAを増幅する可能性が全くないとはいいきれない。したがって厳密な検出を目的とする場合はシークエンス等を行って繊毛虫であることを確認する必要がある。
  • 図3のバンドはクローニングを行い、繊毛虫の塩基配列であることを確認している(未発表データにつきデータは記載していない)。
  • 土壌等の環境試料からのDNA 抽出は市販の抽出キットを用いる。

具体的データ

図1 繊毛虫33種の18SrRNA中の高保存領域と設計したプライマー(太字部分)

 

図3 土壌から抽出したDNAのPCR増幅産物の電気泳動写真
矢印が繊毛虫のバンドを示す。1、2は採取時期が異なる試料。

 

図2 作成したプライマーを用いた各種生物のDNAのPCR増幅産物の電気泳動写真(線虫は農業環境技術研究所 岡田浩明 、荒城雅昭両氏の提供による)

 

その他

  • 研究課題名: 畑土壌に生息する土壌動物相、特に原生動物相解明のための同定手法の開発
  • 課題ID: 05-03-04-01-14-04
  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2001∼2005年度
  • 研究担当者: 島野智之、笠原康裕(茨城大学)、村上敏文