キュウリ根部組織内に伸展するホモプシス根腐病菌の形態的特徴
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要約
ホモプシス根腐病菌をキュウリ苗に接種すると、根部の維管束に沿って伸長する太い菌糸と皮層細胞に蔓延する細い菌糸が観察される。この特徴はタイプ標本由来株ならびに本邦で分離されたホモプシス根腐病菌に共通である。
- キーワード:
キュウリ、ホモプシス根腐病、根部組織、組織学的観察
- 担当:東北農研・畑地利用部・畑病虫害研究室
- 連絡先:電話024-593-6175、電子メールnagasaka_atsushi@affrc.go.jp
- 区分:東北農業・生産環境、共通基盤・病害虫(病害)
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
東北地域で栽培されている露地キュウリでは、抵抗性をもつ台木の利用でつる割病や疫病などの土壌病害を回避してきたが、近年被害の
著しいホモプシス根腐病には効果がない。そのため、土壌消毒や根域の制御による汚染土からの隔離といった手段が検討されているが、これらによる確実な防除
のためには病原体が宿主の根系へどのような障害を与えることにより地上部の萎凋症状を引き起こしているかを解明する必要がある。そこで本研究では、ホモプ
シス根腐病菌を感染させたキュウリ苗の根部における組織学的な観察を行い、菌糸の伸長様態や形態的特徴をまず明らかにする。
成果の内容・特徴
- キュウリ種子(品種:パイロット2号)の表面を殺菌して植物培養容器内で育成した子葉期の苗にホモプシス根腐病菌の
タイプ標本由来株を接種し、2週間後に萎凋症状を示した幼苗の根部組織内には、維管束に沿って伸長する太い菌糸(菌糸幅9.2-14.5μm:平均
12.4μm)と、皮層に蔓延する細い菌糸(菌糸幅1.7-5.7μm:平均
3.7μm)が認められる(図1)。
- ガラス室内でポット栽培した本葉1葉期のキュウリ苗(品種:パイロット2号)に、タイプ標本由来株と国内でウリ科作物から分離されたホモプシス根腐病菌9菌株をそれぞれ接種すると、3週間後に萎凋症状を示した個体の根部組織には太い菌糸(菌株毎の平均菌糸幅
12.6-18.8μm)の伸長が維管束に沿って認められ、皮層では細い菌糸(菌株毎の平均菌糸幅
1.9-5.2μm)の蔓延が認められる(表1)。
- 本葉1葉期にホモプシス根腐病が発生した圃場の汚染土に定植し、3週間後に萎凋症状が発症したキュウリ苗(品種:パイロット2号)の根部組織にも同様の2種類の菌糸の蔓延が見られる(図2)。
成果の活用面・留意点
- ホモプシス根腐病菌の宿主組織内における形態の特徴が明らかになることで、宿主組織への進入経路や組織内での動態を解明するための基礎的知見となる。
- キュウリ苗の自根を用いた結果であり、接ぎ木栽培に用いられるカボチャ台木における結果ではない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:
ホモプシス根腐病解決による露地夏秋キュウリ安定生産技術の確立
- 課題ID:
05-03-03-01-17-05
- 予算区分:
競争的資金(高度化事業)
- 研究期間:
2005∼2005年度
- 研究担当者:
永坂 厚、門田育生