地域自給飼料を活用した日本短角種の生産は地球温暖化負荷が低い

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要約

地域自給飼料は輸入飼料よりTDN1トンあたりの地球温暖化負荷が低い。日本短角種を用いた肉用牛生産(育成および肥育)において、地域自給飼料に基づく飼養体系は輸入飼料に依存した飼養体系より地球温暖化負荷が低い。

  • キーワード:ライフサイクルアセスメント、肉用牛、地域自給飼料、輸入飼料、地球温暖化負荷
  • 担当:東北農研・総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先電話:019-643-3412、電子メールmamat@affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地、共通基盤・総合研究
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

家畜生産における環境保全を考える場合、さまざまな飼養管理システムを比較する統一的な基準が必要となる。ライフサイクルアセスメ ント(LCA)は、製品の原料採取から製造・使用・リサイクル・廃棄に至るライフサイクル全体にわたり、環境負荷や資源利用を計量・評価する手法であり、 食品工業界などで積極的に利用されている。地球環境影響の観点から肉用牛生産における地域自給飼料利用の有効性を評価するため、LCAにより各種の飼養体 系について地球温暖化負荷を計量し、比較する。

成果の内容・特徴

  • 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)および亜酸化窒素(N2O)の排出量から計量した飼料の TDN1トンあたりの地球温暖化負荷は、地域自給飼料が低く、輸入飼料が高い(図1)。輸入飼料ではCO2排出による負荷が大きい。
  • 肉用牛の育成および肥育(図2)における地球温暖化負荷は、飼養期間の累積(図3-A)、増体1kgあたり(図3-B)とも、日本短角種の放牧育成・地域自給飼料肥育、同放牧育成・配合飼料制限肥育、同放牧育成・配合飼料給与肥育、黒毛和種の放牧育成・配合飼料多給肥育、同舎飼育成・配合飼料多給肥育の順に、後者ほど高い。
  • 日本短角種を用いた肉用牛生産において、地域自給飼料に基づく飼養体系は輸入飼料に依存した飼養体系に較べて地球温暖化負荷が低い(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 肉用牛生産における飼料自給率向上および食品循環資源の飼料利用の促進に向けた参考資料として活用できる。
  • 輸入飼料、地域自給飼料とも、輸送距離によって計量結果は異なってくる。
  • 地域自給飼料として飼料イネを組み入れた飼養体系については検討していない。

具体的データ

図1 飼料のTDN1トン当たりの地球温暖化負荷

 

肉用牛生産のフロー

 

図3 肉用牛の育成・肥育における地球温暖化負荷 A:飼養全期間の累積 B:増体1kgあたり

 

その他

  • 研究課題名: LCA分析による赤肉生産における自給飼料利用の環境影響評価
  • 課題ID: 05-01-04-*-15-05
  • 予算区分: 交付金プロ(日本短角種)
  • 研究期間: 2002∼2005年度
  • 研究担当者: 近藤恒夫、築城幹典(岩手大学)、村元隆行、東山雅一
  • 発表論文等: 近藤ら(2005) 日本草地学会誌 51:226-233.