米脱臭スカム油からのトコトリエノール高純度分取技術

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要約

強い血管新生阻害作用がある機能性成分トコトリエノールは、工業用分離技術である擬似移動層クロマトグラフィーを適用することにより、米油の製造工程で生ずる残さである脱臭スカム油から94%以上の高純度で高効率に連続製造することができる。

  • キーワード:トコトリエノール、米残渣、バイオマス、分離技術、擬似移動層クロマト
  • 担当:東北農研・寒冷地バイオマス研究チーム
  • 連絡先:電話024-593-6178、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・流通加工、共通基盤・バイオマス
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

不飽和ビタミンE“トコトリエノール(T3)”は強い抗酸化性と血管新生阻害作用を有し、糖尿病網膜症やリュウマチ性関節炎などの疾患予防が期待される注目の機能性成分である。T3は潜在的な需要が大きいが、製造技術が確立していないため、60%以下の低含量のものが少量しか製造されていなかった。このため、高純度T3の大量供給技術が望まれている。T3の有望な分離源は米であり、米油の製造工程で生ずる脱臭スカム油にはT3が含まれている(図1)。したがって、脱臭スカム油からT3を工業的に製造できる技術が開発されれば、大きく米のカスケード利用事業に資することが可能である。そこで、擬似移動層方式クロマトグラフィーを適用して、94%以上の高純度T3を工業的に連続分離する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 米油の製造工程で排出される脱臭スカム油(T3を約2%含有)を分子蒸留し、T3分離原料に利用する(図1)。
  • カラムを4本使用する多成分分離方式擬似移動層方式クロマトグラフィーを適用することで、1サイクル1時間程度で分離が可能である(図2,3)。
  • 分離吸着剤としてオクタデシルシリル(ODS)シリカゲルを使用することにより、T3と夾雑するトコフェロールが良好に分離できる(図3)。
  • 分離に使用する溶媒はエタノールと水の混合溶媒であることから、得られるT3は食品への利用が可能である(図3)。
  • 最適分離条件で得られるT3はγ-体を主成分とする混合物で、純度は94%以上、回収率は80%以上である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 血管新生とは、新しい血管が形成される現象であり、糖尿病性網膜症、リウマチ性関節炎などの疾患と深い関係がある。血管新生を阻害することによる血管新生病の治療が期待されている。
  • 本分離条件はそのまま工業レベルへのスケールアップが可能である。
  • 多成分分離方式擬似移動層方式クロマトグラフィーはオルガノ株式会社の特許であり実施にあたっては許諾が必要である。

具体的データ

図1 T3原料油製造工程

図2 小型擬似移動層クロマト装置

図3 分離パターンと最適製造分離条件

図4 各画分の組成分析

その他

  • 研究課題名:寒冷地における未利用作物残さ等のカスケード利用技術の開発
  • 課題ID:411-b
  • 予算区分:バイオリサイクル
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:木村俊之、仲川清隆(東北大)、佐藤康平(オルガノ)、増田隆之(オルガノ)、
                      天野義一(三和油脂)、山岸賢治、老田茂、宮澤陽夫(東北大)、西尾隆