北東北地域のケンタッキーブルーグラス優占草地の連続放牧による牧養力は高い

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要約

ケンタッキーブルーグラス優占草地は、牧養力600CD以上、190日間の肉用種繁殖牛の連続放牧が可能である。草の生産性が高く、飼料成分に問題はなく、植生の維持も良く、北東北地域における肉用種繁殖牛の放牧飼養に十分な機能を果す。

  • キーワード:ケンタッキーブルーグラス、連続放牧、牧養力、永年草地、放牧飼養
  • 担当:東北農研・日本短角研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3562、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、北東北地域の公共牧場では経年的利用に伴いケンタッキーブルーグラス(Kb)優占草地(Kbの冠部被度が50%以上)が増加している。従来、Kbは牧草生産性等の点で評価が低かったが、土壌保全や踏付け耐性、永続性の良さなどからその再評価が求められている。しかし、北東北地域において、Kb優占草地の牧養力や草の生産性は十分解明されていない。そこでKb優占草地の肉用種繁殖牛の連続放牧による牧養力およびそれを裏付ける牧草の生産性や飼料成分を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • Kb優占草地における肉用種繁殖牛の連続放牧下での牧養力は年間600CD以上で、北東北地域の牧養力の目標値(360~540CD:草地管理指標(2000))より高い(表1)。また、牧養力の季節配分は前期で55-61%、後期は39-45%であり、放牧期間190日として、滞牧期間中1日当たり成牛3.2-4.5頭/haが放牧できる(表1)。
  • Kb優占草地の生産量は多く、割り当て草量は体重比で年間3.9%(前期4.3%、後期3.4%)と必要な採食量を得るために十分であり、利用時の平均草丈が約20cmと低く、年間利用率は96%と高い値を示す(表2)。
  • TDNは前後期で63.3-64.5%、CP含量は18.3-24.1%と高い値を示す。Ca、Mg、P、Kのミネラルの含量は基準値に近いあるいは摂取許容限界値以下の値を示す。また、K/(Ca+Mg)当量比およびNO3-Nも何れの時期でも基準値以下を示す(表2)。
  • Kb優占草地では、Kbにシロクローバ、シバムギ等が混生するが、Kbは高い冠部被度を維持する(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 北東北地域における公共牧場のKb優占草地は、繁殖牛(黒毛和種、日本短角種)の連続放牧による活用が期待できる。
  • 東北農業研究センター(標高167m、年平均気温9.3℃、年間降水量1,182.8mm)内の草地(年間窒素水準75-100kg/haを複合肥料(211)で4月上中旬と8月下旬に分施)において黒毛和種繁殖牛(2年間とも妊娠期)と日本短角種繁殖牛(04年は授乳期、05年は妊娠期および授乳期の牛を含む)により放牧試験した結果である。また、供試家畜において、本試験中やその後の繁殖成績に問題はなかった。

具体的データ

表1.連続放牧下のKb優占草地の牧養力.

表2.連続放牧下のKb優占草地の生産,利用および飼料成分(2005年).

図1. 植生の推移.

その他

  • 研究課題名:公共草地を基軸とした日本短角種等の放牧型牛肉生産と地域活性化方策
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:梨木守、東山由美、成田大展