東北地域のサイレージ用トウモロコシにおける有効積算気温の基準温度

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要約

サイレージ用トウモロコシの有効積算気温の基準温度は、東北地域では4℃程度が有効である。しかし、0~5℃の間での有利性に大きな差はないので、実用上は単純積算気温を用いても良い。慣行の10°Cの基準温度は東北地域には適さない。

  • キーワード:トウモロコシ、有効積算気温、基準温度、草地生産管理
  • 担当:東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3543、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

サイレージトウモロコシの流通品種数は100を超えており、その改廃サイクルも4~5年程度と早いため、品種や栽培環境に応じた精度の高い生育予想システムの構築は困難である。このため、導入品種の作期の予想は、試験研究機関での栽培実績から算出した所要有効積算気温に基づいて行わざるを得ない。わが国では、その基準温度として夏作物の一般値である10℃が慣行的に用いられてきたが、これが適正であるかはこれまで十分に検討されてこなかった。そこで東北農研が中心となり 東北6県が協定して実施している優良品種選定試験のデータ(過去7年間)を解析し、東北地域のサイレージ用トウモロコシの作期予想に共通して適用するのに有用な基準温度を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 品種別に播種~出芽期間の有効積算気温を種々の基準温度に基づき算出すると、その値の栽培地や年次による変動は、すべての品種において基準温度を5℃以下に設定した時に最小となる(図1上段)。
  • 出芽期~絹糸抽出期に関しては、33G26のように7~8℃程度で変動が最小となる品種も一部にはみられるが、大部分の品種は5℃以下の基準温度で最小となる(図1中段)。
  • 絹糸抽出期~黄熟期間に関しては、ディアHTのように8℃程度で変動が最小となる品種もみられるが、大部分の品種は、5℃以下の基準温度で最小となる(図1下段)。
  • 上記のように、各生育ステージにおいて大半の品種が5℃以下の基準温度で変動が最小となるため、播種~黄熟期(全栽培所要期間)の有効積算気温は、すべての品種で基準温度が6℃度以下のときに変動が最小となる(図2)。
  • 播種~黄熟期の有効積算気温の変動が最小となる基準温度の平均は4℃弱であることから、東北地域における基準温度の最適値は4℃付近にある。しかし、4℃を基準とした場合と0℃を基準(単純積算気温)とした場合の変動に大きな差はないので、実用上は単純積算気温を用いても大きな不利益は生じない(図2、表1)。また、10℃を基準温度とした場合の変動は、6℃以下の基準温度を用いた場合よりも明らかに大きい(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 東北地域で選定した優良品種の導入可能地域の判断や選定品種を取り入れた作付体系を組み立てる際の指標として用いることができる。
  • 本成果は、品種や栽培地にかかわらず共通して用いるのに有用な基準温度を示したものであり、これは各品種や各栽培地別の最適な基準温度とは必ずしも一致しない。

具体的データ

図1.各生育ステージ別の所要有効積算気温における変動係数と基準温度との関係(4品種抜粋).

図2.播種~黄熟期までの所要有効積算気温における変動係数と基準温度との関係(4品種抜粋).

表1.品種別にみた最適基準温度と播種~黄熟期の有効積算気温(4℃、0℃抜粋).

その他

  • 研究課題名:飼料自給率向上に向けた多様な寒冷地飼料資源の活用技術の開発
  • 課題ID:212-e
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:魚住 順、芦田倫子(青森畜試)、平久保友美(岩手畜研)、青木隆英(宮城畜試)、
                      佐藤寛子(秋田畜試)、鈴木和仁(山形畜試)、新妻恭子(福島畜研)、出口 新、河本英憲、嶝野英子