高温登熟下における胴割れ米発生を軽減する栽培条件

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要約

高温登熟条件下における胴割れ米発生を軽減するためには、登熟初期の高気温を回避する作期選択や圃場内地温を下げる水管理が有効である。また、登熟期間の葉色値が高いと胴割れ率が低下する傾向にある。

  • キーワード:イネ、胴割れ、高温登熟、作期、水管理、葉色
  • 担当:東北農研・寒冷地温暖化研究チーム
  • 連絡先:電話0187-66-2776、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・水稲、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、高温登熟条件による米の品質低下が問題となるなかで、米粒内に亀裂を生じ、品質・食味低下の一因となる胴割れの発生が増加する傾向にある。胴割れは刈り遅れや急激な乾燥調製条件等により発生が増加することが従来から知られているが、登熟初期の高温条件も発生を助長することが最近明らかにされてきた。そこで本研究では、登熟初期の栽培条件等に注目して胴割れとの関連を調査し、胴割れ米の発生を軽減する栽培条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 登熟初期の高気温を回避するような作期を選択することにより、胴割れ率は低く抑えられる(図1)。
  • 登熟初期にかけ流しの水管理を行うことで、胴割れ率が低くなる(表1)。特に出穂後10日間の圃場内最高地温と胴割れ率との間には有意な正の相関関係が認められる(図2)。
  • 登熟期間中の葉色値および成熟期の玄米窒素含有率と胴割れ率との間には有意な負の相関関係が認められ、特に葉色値と相関が高い(図3)。各年次とも穂肥を施用しない区は施用した区と比較して葉色値が低く、胴割れ率が高い(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、高温登熟条件による胴割れ米発生を軽減化する技術構築を行う際の基礎知見として活用できる。従来からの早期落水防止や適期刈り取り、適切な乾燥調製技術も胴割れ防止には重要であり、これらと併用するような栽培技術の構築が望ましい。
  • 登熟期の適正な葉色値については、食味への影響に留意して設定する必要がある。
  • 低温登熟条件や酒造好適米栽培への適用性については未検討である。
  • 本研究における胴割れ判定にはグレインスコープを用い、軽微な割れを含む全ての胴割れを対象として調査を行っている。そのため、米穀品位検査における判定基準とは異なるが、両者は一般に同様の傾向を示す。

具体的データ

図1. 出穂期と登熟気温および胴割れ発生との関係 (圃場試験,2004 年)

表1.登熟初期の水管理条件が胴割れ発生程度におよぼす影響

図2.出穂後10 日間の圃場内地温と胴割れ率との関係

図3.登熟期の止葉葉色値と胴割れ率との関係

その他

  • 研究課題名:寒冷地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 課題ID:215-a
  • 予算区分:気候温暖化
  • 研究期間:2003~2006年度
  • 研究担当者:長田健二、吉永悟志、福田あかり、白土宏之
  • 発表論文等:長田ら(2005)日作東北支報48:33-35、長田(2006)農業および園芸81(7):797-801