多窒素栽培の飼料イネ収穫の適否は籾黄化率または葉色値で判定できる

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要約

飼料イネの出穂からダイレクトカット収穫に適する水分含量65%に低下するまでの積算気温は、多窒素栽培による窒素吸収量の増加に従い高くなる。極端な多窒素栽培でも籾黄化率60%以上、あるいは止め葉葉色値(SPAD値)33以下であれば収穫できる。

  • キーワード:飼料イネ、水分含量、多窒素栽培、籾黄化率、葉色値
  • 担当:東北農研・東北飼料イネ研究チーム
  • 連絡先:電話0187-66-2775、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料、総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ダイレクトカット収穫で発酵品質の安定な稲発酵粗飼料(WCS)を得るためには、収穫時の水分含量を適切な範囲にしなければならない。しかし、未熟な家畜ふん堆肥の多投や極端な施肥増、地力が高い圃場条件等では、高水分での無理な収穫により稲発酵粗飼料の品質を低下させてしまう場合がある。
そこで、WCS用イネ「べこあおば」および「奥羽飼395号」を用いて、登熟期の水分含量の変動を明らかにするとともに、収穫の可否の判断基準を提案する。

成果の内容・特徴

  • 家畜ふん堆肥や窒素肥料の施用条件を変えて飼料イネを栽培した場合、窒素吸収量が多い条件では水分含量が高く推移する(図1)。
  • 飼料イネの水分含量が稲発酵粗飼料のダイレクトカット収穫に適した65%に低下するまでに必要な出穂以降の積算気温は、窒素吸収量の増加に伴い高くなる。収穫可能日は、窒素吸収量1kg/10a増加につき約1日遅くなると推測される(図2)。
  • 多窒素栽培を含む栽培条件において飼料イネの地際10cm以上の水分含量が65%以下となる目安は、籾黄化率が60%以上、あるいは止め葉葉色値(SPAD値)が33以下である(図3)。
  • 極端な多窒素栽培を含む栽培条件でも籾黄化率60%以上、あるいは止め葉葉色値(SPAD値)33以下であれば、ダイレクトカット収穫調製が可能である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 窒素多施用圃場における稲発酵粗飼料の収穫の判断に利用できる。特に早期に収穫する場合にはSPAD値による判定が有効となる。
  • 「べこあおば」「奥羽飼395号」を用いて極端な早期落水をしない条件で栽培した結果である。品種や水管理等により水分推移は変化すると推測される。

具体的データ

図1.飼料イネの登熟期の水分含量の推移の一例

図2.飼料イネの窒素吸収量と出穂から水分含量が65%に低

図3.飼料イネの籾黄化率、および止め葉葉色値と水分含量の関係

図4.飼料イネの籾黄化率と止め葉葉色値の関係

その他

  • 研究課題名:東北地域における水田高度利用による飼料用稲生産と耕畜連携による資源循環型地域営農システムの確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:えさプロ
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:関矢博幸、加藤直人、西田瑞彦
  • 発表論文等:関矢博幸ら(2005) 東北農業研究58:13-14