人工気象室では15℃以下の室温で蛍光ランプの光量が低下する

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要約

人工気象室の照明が室内にあり蛍光ランプを主たる光源としている場合、室温15℃以下では光強度が照明開始後に上昇した後著しく低下する。このような温度条件で光強度を一定に保つには、少なくとも照明開始後数時間、きめ細かい光強度測定・調整が必要である。

  • キーワード:人工気象室、照明、光強度、低温、蛍光ランプ
  • 担当:東北農研・寒冷地温暖化研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3462、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境、共通基盤・農業気象
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

植物の温度応答の研究では蛍光ランプを主光源とする内部光源型の人工気象室がよく用いられる。蛍光ランプの発光効率は温度に依存するが、人工気象室の設定温度によって実際にどのくらい光強度が変動するかについての報告はない。低温では蛍光ランプの輝度は低下し寿命も短くなるため、植物の受ける光強度が設定より低くなる可能性が高い。本研究では、低温時の光強度特性の変化を検討し、人工気象室を用いた低温実験の問題点と解決法を提示する。

成果の内容・特徴

  • 内部に蛍光ランプを主光源に用いる人工気象室(図1)では、点灯後の光強度の経時変化が、常温と低温とで著しく異なる(図2)。低温下では、点灯直後に常温(25℃)時に近い光強度に達した後急速に低下し、安定までに5~6時間を要する。このため低温実験では、点灯後5~6時間は光強度の変動に注意しなければならない。
  • 定常に達した後の光強度は、設定室温6℃の場合で常温に比べて約30%低下する(表1)。光量低下の原因は、蛍光ランプの発光効率の低下によるもので、白熱灯の効率は低下しない。
  • 光強度の低下は気温20℃以下で起こる。特に15℃以下で著しく、定常状態で気温10℃当たり25%以上の低下となる(図3)。
  • 低温実験区の設定では、光強度の低下を補償する対策が必要である。その一例として、照明の上側をアルミホイルで覆う方法の効果を示す(図3)。光の反射と蛍光ランプ温度上昇の効果で、常温時(覆わない場合)の90%程度の光強度が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果では、人工気象室内部に光源がある場合、室温の変化が光源の発光性能に影響することを指摘したが、光源をランプ室などに隔離しても、ランプ室の温度管理によっては、同様の現象が起こりうる。
  • 蛍光ランプの輝度とその温度特性は、ランプの種類や加齢状態により異なる。また低温での使用がランプの寿命を短くする。
  • 光量増加のためのアルミホイル被覆は、光源温度を極端に上昇させるので、低温条件(おおむね15℃以下)にのみ適用可能な対策である。
  • 光量の経時的低下は、安定器温度の上昇傾向と符合するが、この現象が低温下に限られる理由は不明である。

具体的データ

表1.人工気象室内の光強度に及ぼす光源の組

図1.人工気象室内の照明装置への反射板取付

図2.人工気象室内の照明点灯後の光強度の経時変化に及ぼす低温の影響

図3.人工気象室内の照明の定常状態における光強度及び蛍光ランプ表面温度に及ぼす気温の影響

その他

  • 研究課題名:寒冷地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
  • 課題ID:215-a
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:鈴木健策、中村浩史、岡田益己