大豆畑におけるメヒシバのシードバンクは夏までにほとんど枯渇する
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要約
東北の大豆畑におけるメヒシバのシードバンクは発芽や死亡により夏までにほとんど枯渇する。また、大豆の不耕起栽培ではメヒシバのシードバンクは地表面に集中する。メヒシバの埋土種子の寿命が短いことがこれらの原因である。
- キーワード:メヒシバ、シードバンク、種子の寿命、大豆、不耕起
- 担当:東北農研・カバークロップ研究チーム
- 連絡先:電話 024-593-5151、電子メール www-tohoku@naro.affrc.go.jp
- 区分:東北農業・畑作物、共通基盤・作付体系・雑草
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
東北の大豆栽培におけるメヒシバは除草剤による防除が比較的容易で通常それほど問題にはならないが、無除草剤栽培では一転して極めて重要な問題雑草となることが多い。持続的な省除草剤防除体系を組み立てるためには雑草の個体群動態、特にシードバンクの動態に関する知見が不可欠である。このため、大豆の不耕起および耕起栽培畑におけるシードバンクの動態の特徴と、そのような特徴を示す原因を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 大豆畑のメヒシバのシードバンクは、不耕起栽培、耕起栽培、除草剤散布の有無にかかわらず、発芽や死亡により夏までにほとんど枯渇する(図1)。
- 不耕起畑ではメヒシバのシードバンクは地表面に集中する(図2)。こうした種子の地表面への集中は、不耕起栽培の初年目でも生じる(図1)。一方、耕起畑では土中に均一に分布し、多くの個体が出芽する地表面近くの密度は不耕起畑と比べて著しく低い。
- 土中では、死亡により発芽能力のある種子は春までに当初の10%程度にまで減少する(図3)。一方、地表面では、多くの種子が発芽能力を有したまま越冬するが、春以降、発芽または死亡により減耗し、夏までには当初の10%程度に減少する(図3)。メヒシバの種子の寿命がこのようにごく短いことが、メヒシバのシードバンクが夏までにほとんど枯渇し、また、短期間の不耕起で地表面に集中する原因である。
成果の活用面・留意点
- 前年の種子散布が多くても、メヒシバのシードバンクは翌年の夏までにほとんど枯渇するので、1年間の徹底防除は翌年の発生抑制に著しい効果がある。
- シードバンクが夏までにほとんど枯渇するのは不耕起栽培、耕起栽培ともかわりがないが、耕起栽培では出芽個体数が減少するので防除上は有利になる。シードバンクの減少が土中で早かったことから、特に秋耕が防除上有効と考えられる。
- 本研究は東北農業研究センター福島研究拠点(福島市)の黒ボク土畑圃場で行われたものである。種子の損耗要因には、地表面での動物による摂食など不明な点があるので、シードバンクの動態は他の地域、圃場条件では異なる可能性がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:カバークロップ等を活用した省資材・環境保全型栽培管理技術の開発
- 課題ID:214-c
- 予算区分:生物機能
- 研究期間:2000~2006年度
- 研究担当者:小林浩幸・小柳敦史(作物研)・好野奈美子・島崎由美・内田智子
- 発表論文等:Kobayashi H. and Oyanagi A. 2005. Weed Biol. Manage. 5, 53-61.
小林浩幸 2006.東北農研報告 105, 97-154.