シロクローバによるリビングマルチ栽培はトウモロコシの菌根形成を促進する

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要約

休閑させたリン肥沃度の低い畑地でのシロクローバによるリビングマルチ栽培は、主作物であるトウモロコシのアーバスキュラー菌根の形成を促進する。このことが、トウモロコシの初期生育時のリン吸収、および乾物収量が増加することの一因である。

  • キーワード:リビングマルチ、アーバスキュラー菌根、サイレージ用トウモロコシ、シロクローバ、草地生産管理
  • 担当:東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3543、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地、東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

シロクローバによるリビングマルチ栽培(被覆作物中に主作物を不耕起導入する栽培法)には、雑草の抑制効果や窒素の供給効果とともに、トウモロコシのリン欠乏症状が軽減される現象がみられた。しかし、その要因については不明な点が多い。そこで本研究では、トウモロコシのリン吸収と関連の深い土壌の有効態リン酸とアーバスキュラー菌根の形成に及ぼすリビングマルチ栽培の影響を検討する。

成果の内容・特徴

  • シロクローバのリビングマルチ栽培は、トウモロコシの初期生育時のリン濃度や乾物重、および乾物収量を増加させる(表1)。
  • 土壌の有効態リン酸(トルオーグ法)は、リン酸を施肥した場合にのみ増加し、シロクローバのリビングマルチ栽培では増加しない(図1)。
  • シロクローバのリビングマルチ栽培ではアーバスキュラー菌根の形成率が高まる(図2)。
  • 以上のように、シロクローバのリビングマルチ栽培によりトウモロコシの収量が増加する。トウモロコシのアーバスキュラー菌根の形成が促進されたことが、その一因である。

成果の活用面・留意点

  • リビングマルチ栽培によりリン吸収が増加することから、減化学肥料栽培への活用が期待できる。
  • 本成果は、一年間休閑させた畑地(黒ボク土)を用いた結果である。
  • 東北北部(盛岡市)においてリビングマルチ栽培を行う場合には、シロクローバを主作物の播種前年の8月中に播種する必要がある。

具体的データ

表1 トウモロコシの初期生育時の窒素濃度、リン濃度、乾物重および乾物収量

図1 土壌中の有効態リン酸(トルオーグ法)の推移

図2 トウモロコシ細根におけるアーバスキュラー菌根の形成率

その他

  • 研究課題名:飼料自給率向上に向けた多様な寒冷地飼料資源の活用技術の開発
  • 課題ID:212-e
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:出口新、島崎由美、魚住順
  • 発表論文等:Deguchi S et al. (2005) Soil Sci. Plant Nutr. 51. 573-576.