飼料イネ栽培における未熟な家畜ふん堆肥の多投は環境への負荷を増加させる

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要約

未熟な家畜ふん堆肥を多投(36t ha-1)した飼料イネ栽培では、完熟堆肥施用に比べて窒素吸収量が増加するが、窒素、リン流出量は完熟堆肥施用に比較してそれぞれ32%、18%、メタン発生量は2.3倍に増加し、環境への負荷量を増加させる。

  • キーワード:飼料イネ、家畜ふん堆肥、未熟堆肥、窒素、メタン、リン
  • 担当:東北農研・東北飼料イネ研究チーム
  • 連絡先:電話0187-66-2775、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・生産環境(土壌肥料)、共通基盤・土壌肥料、総合研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

稲発酵粗飼料(WCS)の生産では、耕畜間での資源循環を促進し、家畜ふん堆肥を有効利用した飼料イネ栽培技術の確立が望まれる。しかし、腐熟度の低い堆肥が圃場に還元される場合には、飼料イネの生育や環境負荷に影響を及ぼす可能性がある。
そこで本研究では、腐熟度の異なる家畜ふん堆肥の多量施用がWCS用イネ「べこあおば」の生育と水田からの窒素・リンの流出やメタン発生に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • WCS用イネ「べこあおば」の堆肥多量施用栽培において、黄熟期窒素吸収量は水田圃場、ライシメーター水田ともに未熟堆肥区において増加する。水田圃場では黄熟期乾物収量は未熟堆肥>完熟堆肥>無堆肥の順で高いが、ライシメーター水田では完熟堆肥>未熟堆肥>無堆肥の順となり、未熟堆肥の施用による黄熟期乾物収量の増加は圃場条件により不安定である(図1)。
  • 堆肥を多投した飼料イネ栽培における系外への窒素流出量は、無堆肥を100とすると、未熟堆肥では191、完熟堆肥では144であり、未熟堆肥では完熟堆肥に比べて32%負荷量が増加する(図2)。
  • 堆肥を多投した飼料イネ栽培における系外へのリン流出量は、無堆肥を100とすると、未熟堆肥では150、完熟堆肥では126であり、未熟堆肥では完熟堆肥に比べて18%負荷量が増加する(図2)。
  • .堆肥を多投した飼料イネ栽培下におけるメタン発生量は、作付け期間中、未熟堆肥で常に高く、無堆肥を100とすると未熟堆肥386、完熟堆肥167であり、未熟堆肥では完熟堆肥の2.3倍と顕著に増加する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 環境保全に努めた飼料イネの肥培管理技術を開発するための基礎的知見となる。
  • 環境負荷量はライシメーター水田で行った結果である。水田圃場では表面排水などによる負荷量が変動すると推測される。
  • 供試した未熟堆肥は堆肥化処理装置の一次発酵途中のもので、発酵終了後約3ヶ月堆積して二次発酵させた完熟堆肥と比較してコンポテスター値やCO2発生値が高く、アンモニウム態窒素含量が高い(表1)。

具体的データ

表1.供試した家畜ふん堆肥の成分および特性

図1.家畜ふん堆肥を多量施用した飼料イネの黄熟期乾物収量および窒素吸収量

図2.堆肥施用が水田系外への養分流出およびメタン発生量に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:東北地域における水田高度利用による飼料用稲生産と耕畜連携による資源循環型地域営農システムの確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:えさプロ
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:関矢博幸、加藤直人、西田瑞彦、金田吉弘・服部浩之(秋田県立大学)