黒毛和種は同齢乳用種に比べ尿素代謝が相対的に活発で尿素再利用度が高い

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要約

体重当たり一定量の飼料を均等間隔で均等に給与する飼養条件下において、尿素動態を同齢で品種間比較すると、黒毛和種の尿素態窒素濃度はホルスタイン種より高く、黒毛和種の尿素代謝回転速度及び尿素リサイクル速度は離乳以降ホルスタイン種より速い。

  • キーワード:黒毛和種、尿素態窒素、尿素代謝、尿素再循環機構
  • 担当:東北農研・東北飼料イネ研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3564、電子メールwww-tohoku@naro.affrc.go.jp
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

同一栄養条件下、同齢で品種間比較した場合、黒毛和種はホルスタイン種(乳用種)に比べ骨格は小さいが、体を構成する組織中の筋肉/骨比が大きい等の形態学的特徴を有する。このような特徴から、黒毛和種では蛋白質の利用及び合成に連動する尿素代謝動態がホルスタイン種と異なる可能性が想定されるが、黒毛和種の尿素代謝動態に関する知見はこれまで得られていない。そこで、体重当たり一定量の飼料を均等間隔で均等配分する飼養条件(定常状態)下における黒毛和種の尿素態窒素(BUN)濃度、尿素プールサイズ、尿素代謝回転速度及び尿素リサイクル速度を同齢のホルスタイン種と比較することにより、黒毛和種の尿素再循環機構に関連する尿素代謝動態の特徴について検討する。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種及びホルスタイン種雄子牛各6頭の3週齢(哺乳期)、13週齢(離乳後7週目)及び26週齢(離乳後20週目)時の平均体重は各々36.4 vs. 57.8、61.3 vs. 104.7、138.5 vs. 178.3 kgであり、黒毛和種のBUN濃度は全ての供試期でホルスタイン種より高い(図1左)。
  • 黒毛和種の尿素プールサイズは全供試期でホルスタイン種に比べ小さい(図1右)。
  • 黒毛和種の尿素代謝回転速度は13週齢以降、ホルスタイン種に比べ速い(図2左)。
  • 黒毛和種の尿素リサイクル速度は13週齢以降、ホルスタイン種に比べ速くなる傾向を示す(図2右)。

成果の活用面・留意点

  • 尿素再循環機構に関連する尿素代謝動態の特徴から、黒毛和種は同齢のホルスタイン種に比べ体内の尿素代謝が相対的に活発で、尿素の再利用度が高いことを示す新しい知見である。
  • 黒毛和種に対する過度な蛋白質飼料の給与、並びにこれに伴う過剰な窒素分の排泄を是正、抑制するなど、黒毛和種が本来有する尿素代謝機能に対して最適な飼養法の開発のための基礎データとして活用できる。
  • 本結果は、哺乳期に全乳、離乳以降の供試期にオーチャードグラス(TDN:48.0%DM、CP:14.5%DM)と濃厚飼料(TDN:79.2%DM、CP:20.1%DM)を給与した定常状態下の12頭の供試牛に尿素の同位元素希釈法(13C-尿素+15N-尿素の単一静脈注射)を用いて得られたデータから解析したものである。

具体的データ

図1. 黒毛和種及びホルスタイン種のBUN 濃度及び尿素プールサイズの比較

図2. 黒毛和種及びホルスタイン種の尿素代謝回転速度及び尿素リサイクル速度の比較

その他

  • 研究課題名:東北地域における水田高度利用による飼料用稲生産と耕畜連携による資源循環型地域営農システムの確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:科研費
  • 研究期間:2001-2004年度
  • 研究担当者:新宮博行、押部明徳、嶝野英子、櫛引史郎(畜草研)、林英明(東北大学)、小田伸一(岩手大学)、
                      加藤和雄(東北大学)、小原嘉昭(東北大学)