トウモロコシは不耕起栽培でも耕起栽培と同等の収量性が得られる

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要約

黒ボク土圃場で不耕起栽培されたトウモロコシの初期生育、耐倒伏性、雌穂重割合、乾物収量は耕起栽培のそれらと同等であり、4年程度の継続であれば収量性に顕著な低下はみられない。また、不耕起栽培時の雑草は除草剤により効果的に防除できる。

  • キーワード:サイレージ用トウモロコシ、不耕起栽培、黒ボク土
  • 担当:東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム
  • 連絡先:電話019-643-3543
  • 区分:東北農業・畜産、畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

サイレージ用トウモロコシの不耕起栽培はコントラクター等による大規模生産向けの省力化技術として期待されている。すでに専用播 種機が市販化され、導入に際して問題となる越年生・永年生雑草についても防除に有望な非選択性茎葉処理除草剤が2006年に登録されるなど、その普及に向 けた条件も整備されつつある。しかし、実際的な適用技術情報がほとんどないため、収量性に対する生産者の不安は強く、全国的にみても不耕起栽培の導入はほ とんど進んでいない。そこで、実証栽培の結果に基づき不耕起栽培の収量性を評価する。

成果の内容・特徴

  • 黒ボク土圃場において、多様な品種、作期、肥培管理条件下で不耕起栽培されたサイレージ用トウモロコシの乾物収量や雌穂重割合は、耕起栽培のそれらと同等である(図1)。この特性は、東北地域内の標高30m~950mの広範な気象条件下における実証栽培においても再現される(表1)。
  • 4年程度であれば、不耕起栽培を継続しても収量性に顕著な低下はみられない(表1)。
  • 初期生育や耐倒伏性は不耕起栽培によりむしろ向上することがある(表1)。
  • 不耕起栽培は永年生雑草や越年生雑草の経年的な増加を招きやすい栽培法であるが、播種前に非選択性茎葉処理除草剤を施用すれば雑草が増加してくることはない(表1の滝沢村)。ただし、越年生雑草や永年生雑草が少ない圃場では非選択性茎葉処理除草剤は省略することができる(表1のむつ市、表2)。
  • 以上より、黒ボク土圃場では、市販の播種機と登録除草剤を用いた不耕起栽培を導入することによって、飼料用トウモロコシを生産性を落とすことなく省力的に生産できる。

成果の活用面・留意点

  • トウモロコシの不耕起栽培を導入する際の技術情報として活用できる。
  • 裏作導入跡地での発芽安定化技術や再生草抑圧技術は確立できていないため、トウモロコシの単作を前提とした情報として活用する。
  • 本成果はすべて排水良好な圃場で得られたものである。
  • 使用した不耕起播種機2機種(表1の脚注)の基本構造は同じであり、いずれもコールタとディスクで播種溝を切り開き、ホイールで鎮圧する完全な不耕起型式である。

具体的データ

図1.圃場、年次、品種、作期および肥培管理が同じ場合の耕起栽培と不耕起栽培の収量性の対比(プロット試験).

 

表1.実証圃における生育と収量.

 

 

表2.不耕起栽培時の施用除草剤の違いが雑草防除効果に及ぼす影響(1年生夏雑草優占圃場).

 

その他

  • 研究課題名:飼料自給率向上に向けた多様な寒冷地飼料資源の活用技術の開発
  • 課題ID:212-e
  • 予算区分:委託プロ
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:魚住 順、平久保友美(岩手県畜産研究所)、出口新、嶝野英子、折舘信(下北地域県民局)、堀間久巳(岩手県畜産研究所)、尾張利行(岩手県畜産研究所)
  • 発表論文等:魚住ら(2006)東北農研研究報告106:15-26